米グーグル社の地図サービス「ストリートビュー」の撮影車が、無線LANでやり取りされていた情報を誤って収集していた問題が、新たな局面を迎えている。2010年8月に家宅捜索を受けていたグーグルの韓国法人が、近く起訴される見通しだというのだ。この誤収集問題は、世界各地で起こっており、同様の動きが他国でも起こる可能性もありそうだ。
グーグルの撮影車が無線LANのデータを収集していたことが公になったのは、2010年4月下旬のことだ。当初、グーグル側は、無線LAN機器などを識別するための「SSID」や「MACアドレス」といった記号しか収集していないとしていた。
米国、独、仏、伊、オーストリアなどで捜査
だが、ドイツのデータ保護局(DPA)による監査の要請を受け再調査したところ、暗号化されていない無線LANからは「ペイロードデータ」と呼ばれるネットワーク上を流れる情報も収集していたことが判明。グーグルは10年5月に、この事実を発表し、影響範囲は日本を含む30か国以上にのぼることも明らかになった。なお、グーグルの説明では、SSIDやMACアドレスの収集を始めた際、プログラムの中に、ペイロードデータを収集する機能が同社の意図しない形で含まれていたという。同社は問題発覚直後に、撮影車の運用を中止している。
このペイロードデータには、メールの内容や、サイトのアクセスする際のIDやパスワードなどの個人情報が含まれている可能性もあり、米国だけで40州の捜査当局が捜査に乗り出しているほか、米国以外でも、ドイツ、オーストリア、イタリア、フランスなどで捜査が行われている。
その中でも、もっとも強い姿勢で臨んでいるのが、韓国だ。10年8月には、韓国警察庁のサイバーテロ対応センターは、グーグルの韓国法人「グーグルコリア」を8時間にわたって家宅捜索。グーグルコリアは、個人情報を許可無く収集したとして通信秘密保護法違反の疑いが持たれており、ストリートビュー制作に使用したハードディスクを押収されている。米国のグーグル本社からも、ハードディスクの提供を受けたという。
グーグルコリアが数十万件の個人情報を収集?
韓国の主要メディアが2011年1月6日に伝えたところによると、この捜査が大詰めを迎えているようだ。グーグル側が提出したハードディスクは暗号化されていたが、警察は解読に成功。東亜日報によると、グーグルコリアが数十万件の個人情報を収集していた事実が確認されたといい、メールやメッセンジャーの内容、インターネットの閲覧履歴など数千件がハードディスクに収められていることも明らかになったという。韓国メディアは、「この疑いを事実として確認したのは韓国の警察が初めて」(聯合ニュース)などと報じている。
ただし、今後の捜査当局の動きについては、
「捜査機関が疑惑を立証し、起訴することを決めたのは、事実上韓国が初めて」(東亜日報)
「ストリートビュー制作プログラムを作ったり指示した本社の関係者を刑事処罰する方針だが、その対象が誰かはまだ特定できない状況」(中央日報)
「グーグルや、グーグルの幹部が、韓国で起訴されたり処罰されたりするかどうかは、すぐには分からない」(AP通信)
と、内外のメディアで受け止め方に差がある様子だ。
この問題をめぐって、日本の警察当局は表だった動きを見せておらず、捜査を進めているかどうかは明らかではないが、グーグルの日本法人は10年7月21日、撮影車から無線LANデータ収集に関する機器を取り外した上で、ストリートビューの画像撮影を再開したと発表している。