築地市場の初競りで、北海道戸井産のクロマグロが3249万円で落札された。1本あたりの価格では、築地市場に記録が残る1999年以降の最高値。東京・銀座の老舗高級すし店「銀座 久兵衛」と、香港のすしチェーン「板前寿司」が共同購入した。
「板前寿司」は4年連続の最高値での落札。2011年1月6日には東京・赤坂店で本マグロの解体ショーが開かれ、ランチタイムから「最高値」マグロが振舞われた。
初競り最高値「大トロ」1貫1300円
近海もののクロマグロはここ数年、中国や台湾などでも人気が高まり、日本のすし店とのあいだで落札競争が激しくなっている。これに世界的な漁獲規制が加わり、価格が上昇している。
築地市場の初競りには国内外から約500本のマグロが競りにかけられたが、たとえば地中海産は卸値で最近1年で5割程度も上昇しているとされる。
高級マグロといえば青森県大間産が有名だが、2011年は北海道戸井産だった。戸井産のマグロが最高値をつけたのは初めて。2010年の初競りでつけた最高値1628万円の約2倍超、これまでの最高値だった01年の2020万円をもあっさり上回った。
落札した「板前寿司」の代表、リッキー・チェンさんは「日本のマグロはレベルが高い。思った以上に高値になったが、競り落とせてうれしい」と語った。
「板前寿司」では、「初競り最高値まぐろ落札御礼」記念として、「初競り大トロ」が1貫1300円、中トロ900円、赤身500円、鉄火巻1本1000円で食べられる。「本マグロにぎりセット」(大トロ1貫、中トロ3貫、赤身1貫、鉄火巻、サラダ・お椀付き)は5000円だ。 折半分の171キロから約8000貫がとれるそうで、板前寿司ジャパンは「1年中あるものではないので、お目当てに来店する方も多いです」と話す。
高級住宅地に家族と住み、ロールスロイスを所有
4年連続で、クロマグロを最高値で落札したリッキー・チェンさんとは、いったいどんな人なのだろう。
チェンさんは香港や中国、マレーシア、日本などに30か店以上を展開する「香港の寿司王」と呼ばれている。子どもの頃に食べたすしの味が忘れられず、若いときに東京・新宿の寿司店で修行を積んで、2004年に香港に「板前寿司」の1号店をオープン。3年で5店を構えるようになった。
香港や台湾では日本食がブームだが、なかでも美食の香港人に人気なのが寿司。「板前寿司」はカウンター席で板前が握る寿司がリーズナブルな価格で味わえると評判になった。 07年には日本に「上陸」し、東京・赤坂に1号店を出店。その翌年1月の初競りで、日本人を凌いで最高級のクロマグロを競り落とし、「板前寿司」の知名度アップに成功した。
すしチェーンを開業する前には、香港で日本風クレープ店を開いたり、ラーメン店を展開したりして、日本の食文化を広めながら開業資金を貯えた苦労人でもある。いまでは香港の高級住宅街に家族6人で住み、2000万円の運転手付きのBMWに乗り、6000万円のロールスロイスをもつそうだ。