最近株価が堅調な動きを見せているが、その「けん引役」はどうやら中国マネーのようだ。
千葉銀行グループの、ちばぎんアセットマネジメントの調べでは、東京、大阪、名古屋の証券取引所の投資部門別売買動向で、中国系の「SSBT OD05 OMNIBUSACCOUNT(CHINA)TREAY CLINETS」と「オーディ 05 オムニバス チャイナ トリーティ」の2つのファンドが投資を積極化していて、上場企業の主要85社に大株主として名を連ねている。
海外の投資ファンドといえば、これまでは欧米系やオイルマネーが中心だった。中国マネーはこのところ、企業買収や不動産投資で「存在感」を見せつけてきたが、いまや株式市場でも跋扈しつつある。
金融や情報・通信、電力・ガス、総合商社目立つ
この中国系ファンド2社の資金の出し手の詳細は不明だ。ただ、専門家のあいだでは中国政府系ではないか、とみられている。ファンドの買い付け状況をみると、2009年3月期末の13銘柄、時価総額で1556億円だった。それが10年3月期末には35銘柄、6242億円になり、10年9月期末には85社、1兆4975億円に達している。
注目は、保有する銘柄数の増加と、保有銘柄の買い増しにある。ちばぎんアセットのアナリスト、安藤富士夫氏は、
「09年3月期に保有した銘柄を1株も手放すことなく買い増していて、それも投資家なら誰もが知っている代表的な銘柄が幅広く買われている」
と明かす。
中国系ファンドが買った銘柄は、NECや日立製作所、みずほフィナンシャルグループ、大成建設、NTTドコモなどで、最近はコマツや資生堂などの中国関連銘柄も登場している。85銘柄をセクター別にみると、金融や情報・通信、電力・ガス、総合商社、不動産が目立ち、逆にトヨタ自動車や日産自動車などの自動車やその関連銘柄、伊勢丹三越やイオンなどの流通・小売には登場していない。
日本の株価が低いことに目をつけて、「純投資として購入しているようだ」と、前出の安藤氏はみている。「出資比率でいえば、まだ2%程度。株価が上昇しているうちは『モノ言わぬ株主』でいてくれるのではないか」とも話す。
中国の金融引き締めで投資マネー流出
中国マネーの積極投資は近年目立っている。不動産投資では、北海道でリゾート開発のための土地購入が報じられている。リゾート開発そのものが中国人観光客を当て込んだものだが、これに憂慮した北海道庁が中国マネーを含む海外投資家による不動産購入を規制する動きもあるほどだ。
また、企業買収では山東如意科技集団(中国・山東省)が、アパレル大手のレナウンの筆頭株主に躍り出たのは記憶に新しいところ。ラオックスや本間ゴルフ、自動車部品のオギハラなども中国企業に取り込まれた。こうした企業買収は今後さらに増えそうだ。
一方、中国国内は不動産バブルへの警戒感やインフレ懸念から、中国政府は金融引き締めを強めている。2010年10月に、2年10か月ぶりに政策金利を引き上げたが、12月26日からはさらに0.25%引き上げて、1年もの基準金利で貸出金利が年5.81%、預金金利で年2.75%となった。
中国の金融引き締めは2011年に入っても2、3回程度引き上げられるとの観測もある。こうした規制強化で、それを嫌う投資マネーが海外に流出。日本への流入も当分続くとみられている。