正月早々NHKが職員による不祥事に見舞われている。とめてあった自動車の中を物色したり、男子高校生を盗撮したりするお粗末なものだ。しかも、逮捕された2人の職員は、番組制作に直接関わるディレクター職だ。
NHKが報じたところによると、年が明けてわずか4時間後の2011年1月1日4時頃、愛媛県東温市の路上にとめてあった車の中を物色したとして、NHK首都圏放送センターのディレクター、西山泰史容疑者(27)が窃盗未遂の疑いで逮捕された。
男子更衣室にタオルで覆われたビデオカメラが
西山容疑者が、鍵がかかっていない車に上半身を突っ込んでいるのを、車の持ち主の男性が発見。持ち主が声をかけたところ、西山容疑者は逃走を図ったため、男性が取り押さえ、警察に通報したという。帰省中の犯行だとみられるが、西山容疑者は、「ものを盗むつもりはまったくなかった」などと容疑を否認しているという。
一方、建造物侵入の容疑で逮捕されたのは、NHK松江放送局のディレクター、大久保泉容疑者(29)。1月3日17時前、静岡県裾野市のスポーツセンターの男子シャワールームの更衣室に無断で侵入した疑いが持たれている。このスポーツセンターを利用していた男子高校生が、更衣室の棚にタオルで覆われたビデオカメラを発見。ビデオカメラには、男性が着替える姿が残っていたという。
カメラが発見される直前に更衣室から出てきた容疑者に対して警察が事情を聞いたところ、容疑を認めたという。容疑者の実家は首都圏にあるが、なぜ静岡県まで「出張」していたのかは不明だ。
NHK職員をめぐっては、2010年2月には、営業局の男(52)が、品川区内の公園で女性に対して下半身を露出したとして公然わいせつの疑いで逮捕されたほか、10年6月には、横浜放送局営業部の男(35)が、酒に酔って商店のシャッターを蹴り、職務質問した警察官の襟をつかむなどして公務執行妨害の容疑で逮捕されるなどの例がある。
このように、例年も年に数件程度は不祥事が起きているが、番組制作に直接携わるディレクター職の職員が立て続けに逮捕されるのはきわめて異例だ。
新聞社の社会部記者から転職
特に西山容疑者は、10年2月には、深夜ドキュメンタリー番組「ドキュメント 20min.」を担当。羽田空港を23時15分に出発する最終便の乗客をめぐるサイドストーリーを追う番組「羽田発最終便」を制作し、番組ブログにも
「ごく普通の人々のありきたりな日常に潜むドラマ。それがこの番組のテーマです。『あー、俺にもこんな時期あったな』とか、『これからこんなことを経験するのかなぁ』とか、色々と想像しながら見ていただけたらと思います」
などと、番組への思い入れをつづっている。
NHK広報部によると、西山容疑者は09年4月に、キャリア採用ではない通常の採用で入局。NHKは「前職については関知しない」としているものの、愛媛新聞には09年3月まで「社会部 西山泰史」の署名入りの記事がたびたび掲載されており、西山容疑者は愛媛新聞からNHKに転職したものとみられる。西山容疑者は、愛媛新聞の「取材最前線」と題したコラムの中で、交通犯罪の厳罰化が進んでいることについて
「ならば、今回のひき逃げ犯を『無罰』にしていては示しがつかない。「逃げ得」を許さないという県警の威信をかけた捜査が続く」
と、正義感の強さをにじませてもいる。
NHKは、両職員に対して、事実関係を調査した上で処分を検討する方針だ。