枝川二郎のマネーの虎
マックで分かる「円高ではない根拠」 2011年も1ドル85~95円?

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極端な円安になると食糧もエネルギーも買えなくなる

   多くの経済学者が「円高否定論」を唱えているが、その根拠は「デフレ」にある。デフレとはモノの値段が継続的に下がっていくことだ。モノの値段が下がるということは、通貨の価値が上がることに同じと言ってもよい。つまり、「円が強くなる」ということだ。

   今は、諸外国に比べて日本の物価が上がっていないので、円が相対的にどんどん強くなってしかるべきところだ。しかし、実際はそれほど円高になっていない。物価を加味した為替レート(実質レート)の統計を日本銀行が出しているが、それをみると過去10数年間、円は恒常的に過小評価されてきたことがわかる。実力的には、今は1ドル60円であったとしても全然不思議ではない状況だ。それくらいの「円安」なのだ。

   ただし、為替レートはモノの値段の比較(購買力平価と呼ばれる)だけで決まるわけではない。経済状況をはじめ、政治的状況、金融財政政策、金利、資本収支・・・等々ありとあらゆる要因が関係してくる。

   そこで2011年だが、1ドル85円から95円くらいのレンジを予測している。これは、日本経済の問題点が明るみに出ること、外国(外貨)投資が活発化すること、米国経済が徐々に回復していくと考えられること、の3つの要因からだ。購買力平価でみれば円が比較的安い、というのはそのとおりだが、2008年のリーマンショック以来、1ドルが110円から80円台になったことでひとまず円高への動きがおさまったとみている。

   日本では円高の問題点が指摘されることが多いが、円高とは日本人が相対的に豊かになることであり、本質的には望ましいことだ。日本が戦後に奇跡的経済成長を遂げたのも、その多くの部分は円が強くなったおかげだ。逆に言うと、今後極端に円安に振れたとしたら、われわれは食糧もエネルギーも買えない悲惨な状況に陥るだろう。円が強い間に、そのメリットを最大限に享受しておく、というのが正しい態度だと思う。


枝川二郎プロフィール

   枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト

   大手外資系証券でアナリストとして活躍。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。


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