大キャリアと同じやり方では失敗する ジェットスター成功の秘密 
(連載「LCC革命の衝撃」第5回/ジェットスター航空日本支社長・片岡優さんに聞く)

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   世界各地で続々とLCCが設立されているが、成功例は必ずしも多くない。2010年9月に、全日空がLCCへの参入を表明したが、「親会社と市場が競合する」との懸念する声も絶えない。そうした中で、オーストラリアのカンタス航空と、同社の100%子会社として設立されたLCCのジェットスター航空は、二社ともに業績を伸ばしている。LCCの中でも日本にいち早く乗り入れたジェットスター航空の片岡優・日本支社長に、成功の秘密を聞いた。

――LCCという言葉が日本で普及してきたのは、ここ1年ほどのことです。ジェットスターが日本に乗り入れてから約4年、LCCは日本の消費者に受け入れられていると感じていますか。

片岡 LCCという言葉がなかなか浸透していなかったので、「LCC(格安航空会社)」という書かれ方をしていました。そうなると、「格安」というイメージが先行して、「安かろう、悪かろう」と受け止められがちです。当初、お客様にも、そのように思われていたと思うのですが、実際に飛行機を利用された方のお話やフィードバックを聞くと、「普通の会社と変わらない」という声が多い。(親会社の)カンタス航空と(内装が)同じデザインの飛行機ですし、座席にしても、普通の会社と変わらないシートピッチ(座席間隔)です。日本人クルーが乗り、日本語のアナウンスをしっかり行うといった工夫もしています。    ただ、当初は「安かろう、悪かろう」というイメージがあったのは事実で、払拭するために色々と広報活動を行いました。メディアに取材していただいたりしたことも助けになりました。お客様からのフィードバックをもとに、様々な改善も進めました。

営業、販売、予約システムは、ゼロから新しいものを作った

ジェットスター航空が成功した秘密を語る片岡優・日本支社長
ジェットスター航空が成功した秘密を語る片岡優・日本支社長

――例えば、どんな点ですか。

片岡 最初はウェブサイトもオーストラリアのサイトを翻訳しただけでしたが、日本向けにカスタマイズして使いやすくしました。PRにしても、ベッキーさんを起用してお客様に対する親密感を増し、オーストラリアに対するイメージ、ジェットスターに対するイメージを、「明るくて、斬新で、何か面白い」に出来たのが大きいと思います。

――開設している路線からすると、観光需要を見込んでいるように見えますが、ビジネス需要はどの程度あるのでしょうか。

片岡 レジャーのお客様がほとんどですが、成田や関西からゴールドコースト経由のシドニー行きなど、路線によってはビジネスで利用される方もおられます。全体としては、10%未満だと思います。基本的なターゲットはレジャーのお客様です。その層に「楽しく、リーズナブル」に旅行していただくことを主眼に置いています。

――10年には、全日空がLCCの設立を表明しました。全日空は、ジェットスターと、親会社のカンタスの事例をロールモデルにしていると言われています。特にジェットスターとカンタスについては、両社とも業績が伸びています。親会社と子会社が競合しないために、どのような配慮、工夫があったのでしょうか。

片岡 「レガシーキャリア」と呼ばれる既存の航空会社がLCCを設立して、きちんと利益を出して成功している例は、ジェットスターとカンタスの例だけです。他は全部失敗しています。成功の理由は、完全に運航体制・業務体制を分けているということにあります。カンタスから引き継いだ部分は、安全運航面、整備、乗員の訓練といったことに限られています。それ以外の営業、販売、予約システムは、ゼロから新しいものを作っています。カンタスが使っていたものを引き継いだら、コストが下がらないからです。
   たいていの会社は、航空機は塗装だけを変えてLCCにして、乗務員も親会社から出向という形をとったり、販売にしても、元々レガシーキャリアが使っていた予約端末を使い回ししたりする。発券方法も親会社と同様のやり方をしていると思います。変わるのはブランドと、多少の人件費。これでは、大してコストは下がりません。

――そもそも、ジェットスターはオーストラリアの国内線からスタートしています。どういう経緯で立ち上がったのでしょうか。

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