LCC(格安航空会社)が人気を集めている。徹底した効率化に加えて、駐機料の安い郊外の空港を使うといった独自の工夫で、大手航空会社と対抗する。欧米や東南アジア、豪州で、LCCの現状はどうなのか、探った。
37年連続黒字を続けるサウスウエスト航空
航空産業の歴史の中で「格安」をうたった航空会社は複数存在したようだが、経営的に成功を収めた現代のLCCのモデルといえるのが、米国のサウスウエスト航空(SWA)だろう。テキサス州に本拠を構え1980年代以降、米国内に航路を拡大した。全席自由席で機内サービスは簡素、その代わりに運賃を低く抑えた。広大な国土をもつ米国だけに、出張の多いビジネスマンなど頻繁に航空機を利用する人にとっては、豪華なサービスより低価格の方がありがたい。SWAは、そこにビジネスチャンスを見いだした。
後続のLCCが参考にした点は、まだある。使用機を「ボーイング737型」に統一したことだ。整備士は1種類の機体の構造だけを覚えればよく、業務の効率化につながる。さらに、空港使用料を安く抑えるため発着数の少ない郊外の空港を選んだ。いまでは主要空港にも飛ばしているが、2010年11月7日時点での1日あたりのSWA離陸数トップ10を空港別に算出したデータを見ると、シカゴ・ミッドウェー空港やボルチモア・ワシントン空港、ヒューストン・ホビー空港など各都市の2、3番手の空港がランク入りしている。乗客にとっては多少不便になるが、それでも運賃が大幅に安くなるならと選ぶケースが多いようだ。
大手航空会社から見れば型破りとも思える戦略は、利用者の支持を得た。今日では米国内37州72都市に就航。大手航空会社が、経営不振で連邦破産法11条の適用による事実上の倒産や、ライバル企業による買収などにさらされるなか、SWAは創業以来37年連続黒字。2009年度も純利益9900万ドル(約81億2000万円)と、経営は抜群の安定感を誇っている。