2011年4月の東京都知事選は、啓発キャラクターにAKB48が決まったものの、肝心の立候補予定者は誰も手を挙げない状況が続いている。現在3期目の石原慎太郎都知事が去就を明らかにしない中、さまざまな噂や思惑が交錯している。
「現段階では(都知事選立候補は)考えていない」。2010年12月24日、蓮舫・行政刷新担当相は記者会見でこう話した。一方で、都知事職について「指導力を持って仕事をする立場。やりがいは相当大きい」とも述べた。
石原4選出馬なら自民党と公明党は支援へ
蓮舫氏は、7月の参院選東京選挙区で圧勝して以降、何度となく都知事選候補として名前が「あがっては消え、またあがり…」を繰り返している。10月の会見では「(立候補の)可能性はありません」ときっぱり否定していたが、今回12月24日の会見では「現段階では」という「ただし書き」が目に付く形となっている。「やりがい」発言を含め、都知事選立候補の可能性、意欲について今後も憶測を呼びそうだ。
一方、蓮舫氏とは逆の結果で7月の参院選(比例)で落選した民主党の円より子・前参院議員の名前も秋ごろからあがっている。民主党の副代表や東京都連会長も務めた円氏は、菅総理と近いこともあり、「本命」との指摘もある。それでも、「蓮舫氏に比べて地味だ、勝てるのか」と不安視する声もあり、民主党の腹はまだ決まっていないようだ。
もっとも、対応方針が決まっていないのは民主党だけではない。そもそも都知事選の構図が固まらないのは、石原都知事が手の内をみせないことが大きな要因となっている。石原氏が4選をめざすなら、従来通り自民党と公明党は支援することになりそうだ。前回07年の都知事選では、石原氏は2番手の浅野史郎・前宮城県知事に100万票以上の差をつけて勝っている。新顔候補にしてみれば、簡単に勝てる相手ではない、というわけだ。
前回07年の都知事選の際は、石原氏は06年12月都議会で3選へ向け立候補表明した。しかし、今回の10年12月議会では、石原氏が4選目について触れることはなかった。そもそも議会側から質問すら出なかったのだ。「どうせ答えないから」(民主党東京都連関係者)ということらしい。
舛添、東国原、海江田、長妻…
石原氏のダンマリ作戦は、自身の4選のためなのか、それとも後継候補を有利にするために他陣営の動きを封じて準備期間を短くしようとしているのか。
後継候補としては、猪瀬直樹副知事の存在が知られる。07年の副知事就任のときから「後継含み」と指摘されていた。石原氏の支援者周辺によると、石原氏の猪瀬氏への期待と信頼感は揺らいでいないという。猪瀬氏は10年6月、「東京の副知事になってみたら」(小学館101新書)を出版し、東京のさらなる成長について語った。この出版を「都知事選への意欲のあらわれ」と受け取った関係者も少なくない。
一方で、自民と公明の都連関係者の間では、猪瀬氏の議会対応への不満などから「石原氏続投なら支援するが、猪瀬氏支援はNO」との声もあるという。また、マンガ規制などに注目が集まった都の青少年健全育成条例改正をめぐっては、条例改正を支持する猪瀬氏のツイッター(Twitter)での発言が「反対意見の人に対して攻撃的で冷たい印象を与えた」(政治に詳しいジャーナリスト)こともあり、無党派層を狙うにしても厳しい状況なのでは、との見方も出ている。
少なからぬ都議らは、石原氏の都政推進への意気込みの強さなどから4選立候補の可能性は十分にあるとみている。現在78歳という石原氏の年齢も大きな支障にはならないと考える関係者が少なくないようだ。
名前があがっているのは他にも、新党改革の舛添要一代表や宮崎県の東国原英夫知事、海江田万里・経済財政担当相、長妻昭・前厚労相らがいる。検事による証拠改ざん事件に発展した郵便不正事件で無罪となった村木厚子・内閣府政策統括官をかつごうという声も民主党内にはあるという。東国原知事については、都知事選への立候補を決意したとの報道が流れたが、12月28日の記者会見で知事は「そういう事実はない」「白紙」と否定した。
前回07年の都知事選で、石原氏の有力対抗候補、浅野史郎氏が立候補表明をしたのは、投票約1か月前の3月だった。また、石原氏が初当選した際は、石原氏の立候補表明は告示のわずか2週間前だった。都知事選をめぐる「音無の構え」はまだまだ続く可能性がある。