米インターネット大手のヤフーが揺れている。検索サービスでは米グーグルに水をあけられて低迷が続き、人員削減に追い込まれた。そこへ、明らかにされていなかった事業縮小の情報が漏れてしまった。社内向けのプレゼンテーション資料がネットに流出。「実行犯」は、以前ヤフーに買収された企業の創業者だったというが、内部の協力者がいたかどうかは分かっていない。
大手ポータルサイトとして米国のネット業界をリードしてきたヤフーだが、ここ数年は不振が続く。2008年以降は人員削減の実施や、創業者のジェリー・ヤンCEO(最高経営責任者)辞任が続き、米マイクロソフト(MS)による買収騒動まで起こった。
社内説明会用資料をツイッターで暴露
米ヤフー内部で何が起きているのか
2010年第3四半期(7~9月)は、コスト削減や事業売却益が寄与して純利益が前年同期比で2倍以上に増えたが、売上高は同1.6%と微増にとどまる。特に検索広告収入は7%減で、ライバルのグーグルとの差は開く一方だ。10年12月16日には、全社員の5%程度にあたる650~700人の人員整理が実施されると全米で報じられ、ヤフー側もこれを認めた。事業のスリム化の一環と見られるが、話はこれで終わらなかった。
同時にヤフーは、複数のサービスを終了することも決定したのだが、これが正式発表や報道ではなく、内部資料がネット上に漏れ出すという形で伝わってしまった。社内説明会で使われたプレゼン資料の一部で、そこには「サンセット」、つまり廃止されるサービスとして、ブックマークサイト「デリシャス」や検索サービス「アルタビスタ」、SNSの「マイブログログ」など7つが示されていた。さらに6サービスが「統合」とされている。
資料は、エリック・マクーリエ氏のツイッターで公開された。同氏は、実は「廃止」とされたマイブログログを立ち上げた人物だ。その後事業をヤフーに売却し、今はヤフーから離れているという。同様にツイッターでこの資料を公表したアンディー・バイオ氏は、「統合」に分類されたサービスの創業者で、やはりヤフーから離別した。
これにはヤフーの「最高製品責任者」を務めるブレーク・アービン氏が激怒。ツイッター上で「どこで資料を入手したか明らかにしてほしい」と公開で質問したが、二人とも「ウェブで見つけた」「私が出所ではない」とシラを切っている。
解雇される社員にグーグルが触手
サービス終了は事実なのか。ヤフーは米ウォールストリートジャーナルの取材に対して、「当社の合理化の一環として、業績の芳しくない事業や戦略から外れたサービスへの投資をストップし、核となる事業に集中する」と回答し、一部サービスの終了を認めたという。またアービン氏は、資料を外部に流出させた社員は解雇すると怒り心頭だったようだ。ツイッターで資料をさらした二人は、いずれも現在はヤフーと「無関係」のはず。ヤフー内に協力者がいなければ、資料の入手は難しいと見るのが普通だ。いずれにしろ重要情報の流出は、ヤフーの危機管理能力を問われる結果となった。
廃止されるサービスとして挙げられた「デリシャス」は12月17日、ウェブサイト上で、ヤフーとは「決別」して別のパートナーを探してサービスを続けていく意思を明らかにした。一方、解雇される社員を採用したいという企業も出てきた。米質問サイト「クオーラ」には、「サンフランシスコ地域で、ヤフーを解雇された人材の採用に興味のある企業はありますか」との質問内容に、グーグルでウェブブラウザ「クローム」を開発するチームをはじめ多くの企業が投稿。ソフトウェア開発者やウェブデザイナーなどを広く募っている。
業務縮小と相次ぐ人員削減で、重要情報まで流出――。このままいくとヤフーはジリ貧だ。