国際投信投資顧問が運用する「グローバル・ソブリン・オープン」、通称「グロソブ」といえば、日本最大の投資信託として知られるが、その残高がとうとう3兆円を割り込んだ。2010年11月末現在の純資産残高は2兆9956億円で、この1年間のうちに約1兆1500億円(27.9%減)を失った。
一方、公募投信全体の資金流入は続いている。投資信託協会によると、公募投信の新規設定額から解約・償還額を差し引いた資金流入額は2010年11月末で5138億円となり、20か月連続の資金流入となった。純資産残高は63兆1514億円で、前月末から1兆2787億円も増えている。
減少の原因は世界的な金利上昇
「グロソブ」は、欧米諸国など先進国のソブリン債券(国債や政府保証債など)に分散投資する債券ファンド。株式よりも値動きが大きくないのでリスクは小さく、また分配金が毎月受け取れる毎月決算型なので、個人投資家、なかでも高齢者に好評だった。
1997年12月に設定され、純資産残高は2008年8月のピーク時に5兆7600億円にのぼり、160万人もの保有者がいるともいわれた。
ところが、残高は急激に減少。2010年1月には4兆円を割る3兆9630億円となり、それがさらに11月末に2兆9956億円にまで減った。基準価額は5381円(12月16日現在)になっている。
株式ファンドであれば、運用実績の悪化によって残高を大きく減らすことはあるが、ソブリン債券を対象とした債券ファンドがこれほど大きく売られることは珍しい。
減少に加速度がついた原因は、09年1月に運用成績の低迷から分配金(課税前)を40円から30円に引き下げたことがある。毎月分配金を受け取れることに、「グロソブ」の魅力を感じていた投資家は少なくない。それが減らされたのだから、がっかりだ。現在は35円だが、それでも資金流出が止まらない。
その背景には、欧州の財政危機や米国の景気低迷がある。リーマンショック後、欧米諸国は景気浮揚を狙い財政出動を積極的に進めた。一方、ギリシャやアイルランドなどの財政不安の深刻化で、長期金利は世界的に上昇(債券価格は下落)したことが、ファンドの売却へとつながったとみられる。
人気は「新興国」向け、成長力にも期待
「グロソブ」は3兆円を割ったとはいえ、純資産残高のトップにいる。毎月決算型でこれを追う2番手につけているのが、「野村グローバル・ハイ・イールド債券投信(資産国通貨コース)」(野村アセットマネジメントが運用)。1兆923億円の残高は「グロソブ」との開きはあるが、この商品は10年4月に設定されたばかり。わずか8か月で1兆円を突破した「売れている」投信なのだ。
この商品のように、最近の売れ筋は高い分配金が狙える新興国や資源国向けの債券に投資するファンドや通貨選択型といわれるタイプ。たとえば、「三菱UFJ 新興国債券ファンド通貨選択シリーズ ブラジルレアルコース」(三菱UFJ投信)や「短期豪ドル債オープン」(大和住銀投信投資顧問)などがいまや目白押し。ファイナンシャルプランナーの松浦建二氏は「国内外のREIT(不動産投資信託)も配当利回りのよさから資金が流入しているはずです」という。投信市場は、投資家が選ぶのに迷うほどの乱戦模様にある。
ある投信会社の関係者は、「よく言えば、個人投資家の投資意欲が旺盛になったのでしょうが、投信1本あたりの保有期間が短くなってきていることを考えると、少しでも多くのリターンを得ようと短期売買を繰り返す傾向にあるようです」と指摘する。
「グロソブ」を売った資金で投資家が、こうした投信の短期売買で利益を得ている可能性もないわけではない。