専門家「日本中のクラスでありうる」
こうした卒業文集アンケが、全国の学校でどこまで広がっているのかは定かではない。しかし、事件を起こした少年らの卒業文集を分析している新潟青陵大学の碓井真史教授(社会心理学)は、日本中のクラスでありうると指摘する。
「昔は、サザエさんなどの世界のように、いろんなタイプの子がいても、みな友だちでお互いの個性を尊重していました。ところが、今は、クラスに馴染めないおとなしい子が集団から疎外されています。普通の感覚とズレている子を『物知り』などと一目置くのではなく、『本ばっかり読む変なヤツ』などとみなすわけです。豊かで便利な社会の副作用で、人間関係が作れず心の余裕が失われているからでしょうね」
斎藤勇太容疑者について、碓井教授は、卒業文集アンケの結果からみると、疎外されるタイプに当てはまるとみる。そして、重大な事件を起こすのは、おとなしそうな人で優等生タイプが多いと言う。
「乱暴な人は、ストレスの解消相手がいますが、こうしたタイプは違います。社会で活躍できないとまず自分を責めるのですが、それがどこかで『悪いのは世の中だ』と矛先を向けるようになります」
そのうえで、卒業文集アンケなどで疎外するのは問題だとする。
「確かに、ふざけっこが全部よくないと学校側が禁止すれば、人間関係そのものが作れなくなってしまう危険はあります。しかし、ふざけられた方が嫌がっていれば、してはいけませんね。今は笑えても大人になって文集をどう読めるのか、先生もアドバイスするべきでした」
斎藤容疑者の出身高校の教頭は、取材に対し、卒業文集は生徒会が編集・発行したことを明かしたうえで、こう説明している。
「文集については、学校の事業ではなく、当時のことは分からないので、コメントする立場にはありません。いじめかどうかについても、何とも申し上げられません。現在は、文集を見て、誤解を招く内容はきちんとチェックしています」