2010年12月18日に日米同時公開が予定されていた映画「最後の忠臣蔵」の米国公開が延期されることになった。配給会社のワーナー・ブラザース映画によると。公開延期は、英語版のタイトルに対して他の映画会社から「プロテスト(異議)」の申請があったためだという。
ワーナー映画は現在、英語版のタイトルの趣旨と背景を再度説明し、異議の取り下げを要請している。日米同時上映は時代劇としては「快挙」であり、実現していれば、米アカデミー賞のノミネートにも間に合うはずだった。
「ニューイヤーホリデーに間に合わないのは不運」
ハリウッドでも高い評価を受けていた(映画「最後の忠臣蔵」の公式ホームページ)
米国での映画公開に、ワーナー映画は当初、英語版のタイトルを「THE LAST RONIN」と決めていた。MPAA(モーション・ピクチャーズ・アソシエーション・オブ・アメリカ)にレイティング(日本の映倫審査のようなもの)とタイトル・ビュウローに対して、他社から異議がないかを確認する審査の手続きに入っていた。
ところが、タイトル・ビュウローについて、「プロテスト」の申請が米ハリウッドの映画会社からあった。
これを受けて、ワーナー映画は公開日が近いこともあって、邦題と同じ「SAIGO NO CHUSHINGURA」に変更して再申請したが、このタイトルに対して今度は日本の映画会社から異議があった。いずれも類似したタイトルの作品があったことが考えられるという。
「プロテスト」があった場合でも、異議申し立てをした映画会社などがどんな会社であるか、当事者には知らされない。ワーナー映画も「わからない」そうで、「いまビュウローに仲立ちしてもらい、こちらの考えを相手に伝えてもらっています」と、状況を説明する。
「最後の忠臣蔵」は、ベネチアやカンヌなど、他の海外での上映をにらんでセールスの準備を進めていることもあり、米国でのタイトル変更は避けたいところだ。
ワーナー映画は「ニューイヤーホリデーに間に合わないのは不運としかいいようがないが、なんとか『THE LAST RONIN』でいきたい」と話している。
ハリウッドでのプレミア試写会で絶賛されていた
「忠臣蔵」といえば、歌舞伎や人形浄瑠璃、映画にドラマなどで何度も上演されている時代劇の定番。赤穂浪士が仇敵・吉良上野介邸に討ち入った12月14日には、東京・泉岳寺と兵庫県赤穂市で「義士祭」が行われ、毎年多くの観光客などでにぎわう。日本人にはなじみ深い。
映画「最後の忠臣蔵」は、仇討ちから16年後、主演の役所広司演じる、討ち入り前日に逃亡した瀬尾孫左衛門と、真実を後世の伝えるために生き残った寺内吉右衛門(佐藤浩市)の、死ぬことを許されなかった二人の武士のすがたを描いた。
じつは、この映画は2010年10月に米国ハリウッドでのプレミア試写会で上映、絶賛されていた。今回の日米同時公開も、そこでの高い評価を受けて決定したものだった。
ワーナー映画は「関係者一同、作品への評価によって勝ち取った(同時公開)だけに、実現できなかったことは残念ではあります。ただ、それによって作品の評価が落ちるものではありません。異議についても私たちの主張が理解してもらえると信じています」と話す。
日本では予定どおり、あす12月18日に公開。米国でも新たな準備を進めており、早ければ2011年1月中旬にも公開できそうだ。