自動車のパワーウインドーでけがをする事故が後を絶たない。被害の多くは子どもで、指や手を挟まれるケースが大半を占めている。
過去5年間で23件の事故が発生していることから、消費者庁は検討会を設けて対策を話し合ってきた。事故の原因が「おとなの不注意」というケースが多く、パワーウインドーそのものの改良ですぐに問題解決、という単純なシナリオでもなさそうだ。
運転席でのウインドー開閉操作で事故に
国民生活センターは2010年7月21日、パワーウインドーの事故状況を発表した。05~09年度に発生した事故は23件。10年にも、女児が小指を切断、男児が首を挟まれて意識不明に陥るといった悲惨な事例が報告された。これを受ける形で消費者庁では、事故の発生状況の把握や事例の分析、事故防止の対策を目的とした検討会を招集、7月29日を皮切りに合計3回実施した。会には関係省庁だけでなく、メーカー側として日本自動車工業会なども加わった。
12月16日に公表された検討会の取りまとめ資料を見ると、事故の傾向が見えてくる。パワーウインドーがらみの事故に巻き込まれるのは、圧倒的に子どもが多く、その7割は10歳未満に集中している。けがをする個所は指や手が大半。しかも子ども自身のイタズラというよりは、運転席で「おとな」の運転手が助手席や後部座席などのウインドーの開閉操作をした際に発生する場合が多いという。開いていた窓から子どもが手や指を出していたら、運転手が十分に注意を払わないまま閉めてしまって事故に至る、という具合だ。
いわば「おとなの不注意」によるところが大きい。そのため対策の柱の一つは、消費者への注意喚起だという。「運転手のお父さんが後部座席の子どもに向かって『窓閉めるぞ』と一声かける習慣をつければ、防げる事故もあります」と、消費者庁政策調整課では説明する。「パワーウインドーの操作の際は注意しよう」と意識をもたせるために、運転免許試験場や自動車販売店の協力を得てポスターの掲示といった広報活動も進めるという。地道な活動だが、少しずつでも消費者の安全に対する意識を高めるしか手段は見当たらないようだ。