「選管に違法の疑いある」 河村名古屋市長の怒り収まらず

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   名古屋市の議会解散請求(リコール)運動で、解散の是非を問う住民投票を行うことが、大逆転の末決まった。選挙管理委員会の署名審査の結果、一時は大量の無効判定が出て、住民投票は実施されない公算が高いと見られていた。署名集めを主導した河村たかし市長は、住民投票実施決定に安堵の表情を見せつつも「選管には違法の疑いがある」と怒りは収まらない様子だ。

   「署名の署に日が当たると書いて曙。みのさん、これは日本の民主主義の夜明け、曙ですよ」。有効署名の必要数突破を目前に控えた2010年12月15日朝、河村市長は「みのもんたの朝ズバッ!」(TBS系)への中継生出演でうれしそうにこう話した。一方で、「選管は大丈夫なんかなあ。違法の疑いがある」と不満ももらした。

異議申し立ての結果、住民投票実施に必要な数上回る

名古屋政界はどうなるのか
名古屋政界はどうなるのか

   市長が怒っているのは、リコール運動で集まった約46万5600人分の署名のうち、市選管がいったんは署名数の4分の1近くにもなる大量の署名を無効と判定したことだ。11万1800人分以上の大量無効が出たために、住民投票実施に必要な数(有権者の約2割)に約1万2000人分不足する形となった。

   河村市長やリコール運動推進派は、市選管が「20日以内」の審査期間を1か月延長したことなどに対し、「あと出しじゃんけんの厳格化」「違法」などと反発していた。

   11月24日に市選管が大量の署名無効を発表した後、署名簿縦覧、異議申し立ての手続きに移ったところ、約3万2000件の異議申し立てが出された。署名は無効と判定されたが、ちゃんと自分が有効に署名したという訴えが相次いだのだ。

   最終審査の結果、12月15日夕、累計1万5200人分以上の有効署名が上積みされ、住民投票実施に必要な数を約3200人分上回ったことが確定した。

選管は「法に従って粛々とやった」

   12月14日に民主党を離党し、河村市長が代表を務める、地域政党「減税日本」の公認を得て次期市議選に出ることを表明した則竹勅仁市議に話を聞いた。則竹市議は、市選管の一連の対応について「問題点を今後追及したい」としつつ、議会の現状にも矛先を向けた。

   そもそも、河村市長と議会多数派との対立は、市長が進めようとする市民税減税と市議報酬半減を巡ってのものだ。則竹市議は「報酬などの点で自身の保身にしか関心がない、意識が低い市議が多すぎる」と批判し、河村市長とともに報酬額など気にしないボランティアのような新しい市議像を確立したいとしている。

   河村市長から「違法疑惑」を投げかけられている市選管はどう考えているのか。担当者によると、「(11月末に有効署名数を発表した)当時、(伊藤年一・選管)委員長が取材に答えたように、『法に従って粛々とやった』という見解で今も変わっていません」。

   リコール推進派が特に「違法だ」とかみついていた審査期間の延長について、総務省行政課に聞いてみた。地方自治法上は「20日以内に」という(準用)規定になっており、特に延長については定められていない。過去にも20日を超えた他自治体の例はあるという。どうやら過去の例をみる限りでは、審査期間の延長が即違法で撤回すべき案件、ということでもなさそうだ。

   議会解散の是非を問う住民投票は、11年1月か2月に実施される見通しで、同2月にある愛知県知事選と重なる可能性もある。住民投票で、過半数が賛成すれば議会は解散し、出直し市議選となる。

   それにしても、なぜこんなに署名の有効・無効の判断がブレたのか。市選管などの説明によると、主な要因のひとつは次のようなものだ。最初の判定のとき、署名簿の「受任者」欄が空白の署名簿についての追跡調査で、署名を集めたのは誰なのか(代表者なのか受任者なのか、どちらでもないのか)を、「分からない」を含めた4択で尋ねた。

   欄が空白でも問題ない代表者、もしくは「分からない」と答えれば有効判定だったが、面倒だったのか、適当に「受任者」と答えてしまった人が多かったようだ。ならば欄に記載(添付)がなければならず「矛盾する」から無効というわけだ。こうした人たちが、異議申し立ての際、「前回調査で『受任者』と答えたが、実は『分からない』だった」などと主張し、有効と認められたケースが多くあるのだという。

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