情報通信や電力などの社会インフラを柱に
選択と集中と言えば2009年、業績どん底の中で断行したTOB(株式の公開買い付け)による、日立マクセルなど上場5子会社の完全子会社化。重複を避け、グループの資源を有効に使うという狙いも功を奏しつつあるようだ。ただ、なお10社を超える上場子会社をさらに本体に「集中」させる考えはないようで、経済メディアへのインタビューで中西宏明社長は「(再編は)一通り終えた」と語っている。
リストラや「選択と集中」を終えた次の問題は成長の糧をどうするかだが、この点は手探りでもある。この辺りが時価総額で東芝を抜いた後、さらに突き抜けられない要因かもしれない。
中西社長は2010年4月の就任以来、成長の糧に関連し「日立を世界有数の(情報通信や電力などの社会インフラを中心とする)『社会イノベーション企業』にする」と繰り返し述べている。「世界の社会イノベーション」を進めることなどにより、2010年9月中間期で44%程度の海外売上高比率を、今後は6割にまで高めていくことも目指す。
これには最近の官民一体となった「インフラ輸出」の波に乗る必要がある。長い目で見る必要がある分野だが今のところ、目立った成果は出ていない。特にアジアのインフラビジネスは米ゼネラル・エレクトリック(GE)など世界の競合相手との競争が激しい。英国で優先交渉権を得ている高速鉄道の車両更新も、英国の緊縮財政のもと、当初より規模が小さくなりそうだ。「社会イノベーション」でどう次の一手を打てるかに市場は注目している。