民主党の小沢一郎元代表が新党結成に言及したと報じられ、それが本気なら政界再編に発展する可能性が出てきた。それも、新党の行方次第では、菅政権が窮地に追い込まれるというのだ。
「次のことも考えないといけない」
「小沢切り」で支持率回復狙う
鳩山由紀夫前首相らと東京都内の寿司屋で話し合った2010年12月8日夜の会合。産経新聞の10日付記事によると、その席で、小沢氏は上のような含みのある発言をしたという。
記事では、民主党政権がダメなら、との話で出た発言であることから、新党結成に言及したと指摘している。会合には、新党改革の舛添要一代表や無所属の鳩山邦夫元総務相も出ていた。
菅直人首相ら党執行部は、政治資金問題で小沢氏に国会招致に応じるよう求めており、週明け13日の役員会でその方針を決めると報じられている。応じない場合は、年明けにも小沢氏が強制起訴されることを見込んで、離党勧告などをするともみられている。
これに対し、小沢氏らは、自分たちを切り捨てることで政権浮揚を狙っているとして、執行部に協力できないと反発しているというのだ。年明けからの通常国会や春の統一地方選を前に、支持率低迷の菅政権ではもたないとみていることも強気の背景にあるようだ。
小沢氏が新党に言及と報じた理由について、産経では、政党交付金獲得の都合から、年末になると新党結成の動きが出てくることも挙げている。
政治アナリストの伊藤惇夫さんは、小沢氏が党を割って出ることは十分考えられると言う。それは、菅政権が「小沢切り」で支持率回復と公明党引き寄せを狙っている可能性が高いとみるからだ。
衆院議員60人以上も連れて党を割ると窮地に
「菅政権が浮揚するための選択肢は限られています。しかし、仙谷官房長官外しはやりづらいので、内閣改造は難しいでしょう。また、手詰まりとなって衆議院を解散しても、惨敗は目に見えています。最後に残っているのが、『小沢切り』です。たとえ小沢氏の国会招致が実現しても成果は少ないでしょうから、結局は離党勧告になることは十分にありえますね」(伊藤惇夫さん)
ただ、小沢一郎氏が衆院議員60人以上も連れて党を割ると、衆議院が過半数割れになる。そうすれば、菅政権の不信任案が可決され、解散するか総辞職するかの窮地に立たされることになる。つまり、小沢新党への流出をどれだけ食い止めることができるかが、政権生き残りのカギになるわけだ。
「小沢氏は、若手と飯を食べたり、1年生議員で作る北辰会を立ち上げたり、鳩山氏と会合を持ったり、陣営構築に動いています。小沢氏が新党に向けて、どれだけ手を打っているかが勝負ですね。20~30人に留まる可能性もありますが、政界再編のキャスティングボードになれるなら集まるでしょう」
参院議員の場合、10人以上連れていければ、公明党を引き寄せてもねじれは解消できないことになる。
民主党が分裂した場合、菅政権が自民党との大連立に動く筋書きも考えられる。しかし、自民党の大勢は、支持率が低い菅首相の下での連立に否定的と報じられている。とすると、やはり政権生き残りには、「小沢切り」の影響を最小限に留めること以外になさそうだ。
「消費税増税を先送りしているように、そもそも大連立を組んでまでやりたい政策なんてないんですよ。政権にしがみついていたいだけで、政策なんて2の次、3の次なんです。国民にとっては不幸なことですね」