ユニクロの国内販売がここへきて失速している。2010年11月の国内既存店売上高は、前年同期比14.5%減と2桁のマイナスに沈んだ。前年割れは4カ月連続。10月のマイナスは1.1%に縮小していただけに「販売低迷は一時的なものとは言えないのではないか」(アナリスト)との見方も出始めている。
「英語公用語化」などを打ち上げ、世界展開を急ぐユニクロだが、売り上げの9割を占める屋台骨の国内販売が揺らいでいる。
ヒートテック値下げなどで客単価も下がる
ユニクロは11月、創業感謝祭と称して20~23日に大セールを開催した。早朝から各地で開店を待つ行列ができた初日の20日には、売上高が101億5368億円に上り、「1日当たりの売上高が初めて100億円を超えた」と発表していた。それだけに2桁減には意外感があり、11月売上高発表を受けた東京株式市場ではファーストリテイリングの株価が前日比3%安となった。
実は今年に入って2桁減は3月(16.4%)、4月(12.4%)、9月(24.7%)に続き11月で4度目。3月の2桁減は2007年9月以来で、今年の失速ぶりがうかがえる。
販売低迷の要因はさまざまだが、「人々の興味を呼ぶ商品」が店頭に少ないという指摘もある。かつてユニクロの名を世間にとどろかせたのは、90年半ば以降に「フリース」で市場を席巻した時だった。最近では発熱保温肌着「ヒートテック」やブラジャーとノースリーブシャツを一体化した「ブラトップ」で顧客を引き寄せたが、今年はこれといった新機軸、大型商品は打ち出されていない。
客単価が下がっていることも影響している。11月は8.1%減。ヒートテックの定価は1500円だが、今年は目玉商品として990円で販売する日も増えていることなどが、客単価を押し下げているようだ。新機軸や大型商品がないことの裏返しとも言え、値下げで人を呼ばざるを得ないことが客単価を下げることにつながっている。値下げ競争で客単価の下落に苦しむ牛丼の吉野家のようなことが起きているようにも見える。
「ベーシックな商品の開発を強化する」
吉野家こそ、かつてはデフレの勝ち組だったはずだが、今や「すき家」に店舗数、売上高、利益などでも抜き去られ、「負け組」の評価が定着してしまっている。国内では向かうところ敵なしのユニクロが吉野家のようになることにはならないだろうが、2010年8月期連結決算で最終利益が過去最高を更新したことから一転、11年8月期は17%減と4期ぶりの最終減益を見込んでいるのも事実だ。
柳井正会長兼社長は10月の決算発表会見で、国内既存店の不調の原因について「表面的なファッションを追う製品を作ってしまった」と反省の弁を述べた。春先からファッション性を高めて装飾に凝った衣類を発売したことが、ユニクロらしいシンプルさを損ねた、との考えを示したものだ。このため「ベーシックな商品の開発を強化する」として商品構成の見直しに着手したことを明らかにした。その具体的な成果が出るのは来年になるが、人を引きつける「ユニクロらしさ」を取り戻せるか、注目される。