「反ユダヤ」的な動きに対して厳しい抗議活動を繰り広げることで知られる米人権団体が、ディスカウントチェーン大手の「ドン・キホーテ」(東京都目黒区)に、製品の販売を取りやめるように求める文書を送っていたことが明らかになった。
帽子や上着、ズボンやブーツカバーがセット
矛先を向けられているのは、ナチスドイツのシンボルだとされる「かぎ十字」がプリントされたパーティー用コスチューム。人権団体側は、「かぎ十字は今でも、アジア人を含む全ての『非アーリア人』への憎しみの象徴だ」と主張。ドンキ側は指摘を受け、「社会的責任に配慮した」として、即刻回収した。
文書を送ったのは、米国ロサンゼルスに本拠地を置くユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」。同センターは、1995年には「ホロコーストは作り話」などとする記事を掲載した文芸春秋の月刊誌「マルコポーロ」に対して猛抗議したことで知られる。文芸春秋側は同誌の回収と廃刊、花田紀凱編集長(当時)の解任を決め、社長は辞任に追い込まれている。
今回批判されているのは、ドンキが販売していたパーティーグッズのひとつだ。「ナチスの総統」という名前で、ポリエステル製の帽子や上着、ズボンやブーツカバーがセットになったものだ。黒の上着には、かぎ十字の紋章が入った腕章も確認できる。銀座など都内の店舗で売られたといい、通販サイト「アマゾン」でも、3970円で購入できる。
「様々な市民感情・カルチャーに配慮して、直ちに撤去」
人権団体側が2010年12月6日付(米国時間)でドンキ側に送った文書では、
「我々のメンバーのひとりが、御社のチェーンでかぎ十字入りのナチスドイツの制服が売られているのを見て、衝撃を受けている。ナチスドイツは第二次世界大戦でユダヤ人に対する大領虐殺を行った。600万人の無実のユダヤ人や、それ以外にも数百万人の無実の人々がナチスに殺害された。その中には、150万人の子どももいた。かぎ十字は今でも、アジア人を含む全ての『非アーリア人』への憎しみの象徴だ」
などと主張、ドンキに対して販売の中止を求めた。この文書は12月7日午前にドンキ側に届き、数時間後には撤去が完了したという。
ドン・キホーテグループの広報室によると、「ナチスの総統」は10年に入って10セットを仕入れ、これまでに4セットが販売された。つまり、文書が届いた直後の12月7日午後に、6セットを撤去したことになる。同社は、
「企業の社会的責任を果たすという意味で、様々な市民感情・カルチャーに配慮して、直ちに撤去した。今後はこのようなことがないように徹底したい」
と話している。
製造元のパーティーグッズメーカー(東京都足立区)は、
「マスコミ対応できるものが終日外出しており、コメントできない」
としている。