15年前に決着したはずの旧住宅金融専門会社(住専)問題がまた騒がしくなっている。整理回収機構(RCC)が破綻した住専から買い取った債権の2次損失が、2010年9月末時点で1兆2124億円に膨らみ、再び公金を投入して穴埋めしなければならない可能性が高まっているからだ。住専処理をめぐっては巨額の公的資金投入が批判を浴びただけに、さらなる国民負担となれば、反発は避けられそうにない。
RCCは住専法に基づき、破綻した旧住専7社から1996年に約6兆円の資産を買い取った。債権は15年かけて回収することになっており、2011年末に業務が終了する予定。
担保不動産の下落で2次損失増加
しかし、担保不動産の下落で回収は買い取り額を大幅に下回っており、この9月末時点の2次損失は3月末と比べて123億円増加した。
最終的な2次損失は、官民が折半で負担する取り決めになっており、このままだと政府が6000億円超を穴埋めしなければならない。政府分の損失には、2000億円超の債権回収益を充てたうえで、国民負担の軽減を目的に民間金融機関が設立した基金の運用益で埋める計画だが、低金利のあおりを受けて運用益は1600億円弱にとどまり、なお2000億円超の不足が生じる見通しだ。
政府は来年度予算の概算要求で、不足分を手当することを検討したが、「さらなる税金投入は国民の反発を招く」(金融庁幹部)として断念。手詰まり状態となった政府内からは「最後は民間金融機関に追加負担を要請するしかない」との声も聞こえ始めた。
「国は15年前の約束をほごにするのか」と激怒
だが、金融界も別の基金などを使い、損失の半分を穴埋めしなければならない立場。民間に肩代わりさせようともくろむ政府に対し「国は15年前の約束をほごにするのか」(大手行幹部)と激怒している。全国銀行協会の奥正之会長は「官民折半の原則を貫く方向で検討していただくほかない」とクギを刺した。
15年前の時点では、基金の運用利回りを年3%と見込み、国民負担は回避できるとの皮算用もあった。国民と金融界のどちらに負担を求めても、政府の見通しの甘さを批判されるのは確実で、金融当局からは「15年前の問題を押しつけられた」とのぼやきも上がっている。落としどころを見つけるのは容易ではなく、官民両方から「波風を立てないためには、2~3年の先送りはやむなし」との雰囲気も強まっている。