覚せい剤などの違法薬物の売買情報掲示板を開設・運営していたとして逮捕された男性が、偽の薬物を販売し、1500万円もの大金を稼いだと供述していた。「S売ります」などと書き込み、覚せい剤の代わりに塩を販売していたが、モノがモノだけに被害届も出ていないようで、詐欺容疑でも立件されていないという。
2010年9月、長野県在住の無職男性(36)が「薬味BBS」といった名前の掲示板サイトを開設し、密売を助けたとして覚せい剤取締法違反(営利目的譲渡)のほう助容疑で兵庫県警薬物銃器対策課に逮捕された。
偽薬物販売目的に60以上の掲示板開設
10月中旬には、同法違反(広告ほう助)で起訴された。同課によると、この男性は、4年前から違法薬物売買情報を書き込むための掲示板を60以上開設し、違法薬物の密売情報が掲載されていると知りながら掲載を続けていた。
男性が運営していた掲示板では、一部密売人も摘発されたが、男性自身も偽物の薬物情報を書き込んでいたという。男性の供述によると、覚せい剤を示す隠語「S」、大麻を示す隠語「クサ」などを使って、Sは「01(0.1グラム)6000円」、クサは「1(1グラム)6000円」などと書き、Sの注文者には塩、クサの注文者には茶葉を郵送していた。
文句が来ても「Sは『Salt(塩)』のS、茶葉だってクサだ」などと言い訳するつもりだった、という。そもそも掲示板を開設したのも偽薬物の販売が目的で、方法はネットで知り「1500万円近く稼いだ」と供述しているという。
騙された注文者から被害届は出ていない模様
騙された注文者から被害届は出ていない模様で、同課によると男性は詐欺容疑で立件されていない。そもそも違法な薬物を入手しようとしていた後ろめたさから、被害届が出しにくいと見られる。
厚生労働省監視指導・麻薬対策課の担当者も「被害届を出したとしても、塩を買おうとしていたわけではなく、本人は覚せい剤を買おうとしていたわけですから、警察から何らかの疑いを持たれる可能性はあるでしょうね」と話している。
似たような事例では、07年に都内の少年ら2人がネット上で偽の覚せい剤を販売したケースがある。ただこちらは詐欺容疑で逮捕されている。
2人が、水道水のカルキを抜く市販の錠剤をハンマーで砕いて覚せい剤と偽り、1グラム3万5000円で販売したところ、偽物と気付いた男が少年を呼び出した。殴り合いになり、少年が傷害の現行犯で逮捕されたことで偽取引が発覚したというが、傷害事件にならなければ明らかにならなかった可能性もある。
兵庫県警薬物銃器対策課の担当者は、「偽物もあれば、本物が売買されている有害サイトも依然としてあるので、今後も引き続き厳しく監視と取締を行っていく」と話している。