転職者の求人市場に薄日が差し込んできたようだ。中でもIT、インターネット関連は、2010年春から求人が増え始め、倍率が1倍を超えた後も順調に伸びている。
業績好調なSNS企業が、即戦力となるエンジニアを大勢求めていることが背景にあると見られる。だが、スキルの高いエンジニアの数は元々限られており、各社とも少しでも多くの人材を確保しようと躍起になっているようだ。
業績好調SNS企業が採用に積極的
人材紹介や求人情報サービスのインテリジェンスが2010年10月27日に発表した、10年7~9月の転職求人倍率を見ると、10年9月はIT・通信・インターネット関連が1.18倍と、メディカル関連に次いで2番目に高い数字となった。09年7月の0.90倍を底に、ほぼ一貫して右肩上がりとなっている。
採用に積極的なのは、成長著しいSNS企業だ。インテリジェンス広報部によると、10年春から、ゲームなどアプリケーションの開発エンジニアの求人が増えてきたという。「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)やグリーなど、ソーシャルゲームをヒットさせ成長著しい企業が、採用を拡大した模様だ。急速に普及が進むスマートフォン(高機能携帯電話)向けのアプリケーション開発でも、エンジニアは必要とされている。加えて夏からは、共同購入型クーポンを手がけるネット企業からの求人が急増。そのため、中には数百人単位での中途採用を行う企業も出始めた。
ところが、元々優秀なエンジニアは少なく、簡単には見つからない。一方でSNSやクーポンサイトは競争が激しくなり、人材不足で自社の成長を止めたくない。限られた「パイ」を巡って争奪戦のような事態になっているようだ。
インテリジェンスが紹介した人材を企業が採用した場合、採用した人の年収の35%程度が手数料としてかかるが、「最近では、手数料を50、60%にアップしてでもエンジニアを確保してほしい、との要望が企業から入るようになりました」(同社広報部)。