パナソニックの乾電池の累計生産がこのほど、全世界で1500億個を達成した。乾電池の累計生産個数でパナソニックは世界一を更新し続ける歴史あるメーカーだ。
パナソニックは1931年に乾電池の自社生産を開始し、国内では1960年代の「ナショナルハイトップ」「ナショナルネオハイトップ」などのマンガン乾電池がヒット。赤と黒のラベルが乾電池の代名詞となるほど普及した。その後は水銀ゼロのアルカリ乾電池を開発し、大幅なパワーアップを図るなど、パナソニックの乾電池の歴史は、日本の電化製品の進化と重なる。近年は海外の新興国で乾電池の需要が伸びており、創業100周年となる2018年には累計2000億個到達を目指すという。
「世界一長持ち」としてギネスブックに認定
累計生産の1500億個の乾電池を単3形に換算すると、地球180周分の長さになるという。パナソニックが1931年に乾電池を自社生産したのは、同社がナショナルブランドを初めて採用した「角型電池式ランプ」を本格的に普及させるのが目的だったというから、時代を感じさせる。
戦後は1954年に国産初の「完全金属外装」の「ハイパー」を開発。ハイパーは懐中電灯などに使用され、63年発売の「ハイトップ」はテープレコーダーとトランジスタラジオが使用機器の半数近くを占めたという。69年の「ネオハイトップ」は、当時流行し始めたラジカセが使用機器の主役だった。
その後、同社は87年にアルカリ乾電池「ウルトラアルカリ」「パナソニックアルカリ」を発売。91年から92年にかけては水銀ゼロのマンガン乾電池とアルカリ乾電池を発売し、環境対応を強化した。95年には携帯情報端末やデジタル機器の普及に対応し、大幅にパワーアップした「大電流パワーアルカリ乾電池」を開発。この頃から乾電池には大電流化が求められ、「マンガン乾電池からアルカリ乾電池への移行が加速した」という。
近年では2008年発売の長寿命アルカリ乾電池「エボルタ」が「世界一長持ちする単3形アルカリ乾電池」としてギネスブックに認定されている。乾電池は、その時代のニーズに基づく電化製品に合わせて、進化を遂げてきた。
世界での年間販売シェアは約15%で第3位
乾電池は国内に限らず、世界に供給するグローバル商品でもある。パナソニックは自社生産開始間もない1939年には同社初の海外拠点となる中国の上海に乾電池工場を開設するなど早くから海外進出を図り、現在は世界11カ国で生産、89カ国で販売している。近年、先進国では繰り返して使える充電池が普及し、旧来の乾電池の需要は頭打ちになっているが、アジアや中南米など新興国では電化製品の急速な普及で乾電池の需要が伸びている。
乾電池の累計生産で世界1のパナソニックだが、現在の世界での年間販売シェアは約15%で、米国の2社に次ぎ、3位。パナソニックで電池部門を担うパナソニックエナジー社は「乾電池は多くの人にとって、子供の時に初めて出会うパナソニックの製品で、ブランド戦略上も重要だ」と話している。
同社はこれまで国内だけで生産してきた長寿命アルカリ乾電池「エボルタ」の製造拠点を11年3月にタイに開設するなど、乾電池生産・販売の軸足を海外に移す構えで、名実ともに世界トップを目指すようだ。