北朝鮮が韓国の延坪島を攻撃して3日。北朝鮮側は連日のように「南側が軍事的な挑発を行った」「砲門は、まだ開いている」といった強気な主張を繰り返している。数日後には、黄海で韓国と米国による軍事演習も予定されており、さらなる軍事衝突も懸念されている。
北朝鮮が攻撃を行ったのは2010年11月23日のことだ。この日に朝鮮人民軍最高司令部が発表した声明では、韓国軍が沖合で行っていた「護国訓練」について、
「無謀な軍事的挑発を敢行した」と非難。
北は再三今後の攻撃を示唆
その上で、
「傀儡らの軍事的挑発に対して、即時的で強力な物理的攻撃で対応する断固たる軍事的措置を取った」
と攻撃を正当化。さらに、さらなる攻撃すら示唆した。
「今後も、我々の革命勢力は、南朝鮮傀儡らがあえて我々の祖国の領海を0.001ミリでも侵すようなことがあれば、躊躇することなく無慈悲な軍事的対応を続けることになるだろう」
翌11月24日の外務省コメント。
「我々は、今は超人的な自制心を発揮しているが、正義の守護者である我々の軍隊の砲門は、まだ開いている状態だ」
11月25日には、朝鮮人民軍の板門店代表部が、朝鮮戦争後に米軍などの連合国側が北方限界線(NLL)を設定したことを引き合いにだし、
「今回の事件が発生したことは、他ならぬ米軍側にも責任がある」
と非難。
「南朝鮮傀儡好戦者が再び無分別な軍事的挑発を敢行するならば、我が軍隊は躊躇なしに2次、3次的な強力な物理的報復打撃を加えることになるだろう」
と、やはり今後の攻撃を示唆している。
そんななか、米軍と韓国軍が予定しているのが、黄海上での合同軍事演習だ。11月28日から12月1日にかけて、原子力空母「ジョージ・ワシントン」や、イージス巡洋艦などが参加して行われる予定だ。
これを受け、日本では菅直人首相が、演習期間中は都内から出ないように全閣僚に求める「禁足令」を出すなど、緊迫感が高まっているようにも見える。
宣伝放送が再開された場合、何らかの攻撃がある?
だが、「米韓軍事演習中は、北朝鮮は手を出せないのでは」と見るのは、コリア・レポートの辺真一編集長だ。
「北朝鮮は、今回の攻撃で『NLLの不合理性と、休戦協定を平和協定に切り換える必要性を国際社会に迫る』という初期の目的を達成しています。にもかかわらず、米軍の『ジョージ・ワシントン』がいる前では手を出すはずがありません。北朝鮮が太刀打ちできるはずありませんし、北朝鮮も米軍の怖さはよく知っています」
ただし、問題は「軍事演習後」だ。辺編集長は、
「今回の攻撃は、金正日総書記の決定・指示に正恩氏が忠実に従ったもの。父親が、息子に実績を上げさせようとしているんです。次に何かあるとすれば、韓国側が、北朝鮮が主張するところの『領海侵犯』をした時か、非武装地帯で拡声器を使った宣伝放送を再開したときでしょう」
と、今後も緊張関係は続くと予想している。
韓国側は、10年6月に拡声器を設置。その際、北朝鮮側は「照準射撃する」などと警告しており、実際に宣伝放送が再開された場合は、何らかの攻撃が行われる可能性もある。
また、毎日新聞の鈴木琢磨編集委員は、11月26日朝のTBSの情報番組「朝ズバッ!」で、
「北のシナリオでは、これで収めるつもりはない。来週以降、まだまだ何かある。韓国側も、民間人の死者が出たことで、世論が一枚岩になっている」
と話し、北朝鮮が何らかの攻撃を行った際は、韓国側も強い対応に出ざるを得なくなる可能性を指摘している。