エサ不足のクマを救おうと、自然保護団体がドングリ1トンをもヘリで山にまいたことに、疑問の声が相次いでいる。生態系を乱す恐れがあるのではないかというのだ。
袋詰めのドングリが音を立てて、バケットに流し込まれる。そして、ヘリがバケットをロープで吊し上げると、富山県内の山林に飛び立っていった。
環境省「ネズミが食べるだけで生態系かく乱」
テレビ朝日系のニュース番組で報じられた2010年11月24日のドングリまきシーンだ。ニュースでは同時に、ドングリをもらったクマが手を上げて喜ぶアニメーションも流されていた。
この秋は木の実が凶作とされ、全国各地でクマが市街地などに出没する騒ぎになっている。ドングリまきを行ったNPO法人「日本熊森協会」は、このまま捕獲され続ければクマが絶滅すると、全国の公園などからドングリを集めて所有のトラスト地670ヘクタールでまいた。ヘリ使用は初めてだが、ドングリまきは、凶作だった04、06年に続き3回目だという。
ところが、ブログなどでは、こうした行為が山の植生を乱すのではないかと疑問が出て、コメントも多数寄せられている。
環境省は、ドングリまきが全国各地にむやみに広がることには否定的な立場だ。鳥獣保護業務室の担当者は、専門家から聞いた話として、こう言う。
「都市部のドングリを持ってきていますので、植生の遺伝子そのものがかく乱される恐れがあります。しかも、地域にない虫がついたものが入っています。地域や都道府県が了解しているならともかく、どこもかしこもというのはどうなのかと思います」
ドングリをまいても、クマよりむしろ、ネズミがかなりの量を食べてしまうとも言うのだ。
「クマは、枝の上に登り、ドングリをもぎって食べるんですよ。ドングリをまけば、小さなネズミが大量に繁殖して、豊作のときも全部食べられてしまうので、ますます木の実が不足します」