相手に応戦する場合は「倍返し」する規定
李大統領は今回の砲撃事件でも、「断固とした措置を取る」と表面上は強い姿勢を押し出している。ネットには、「李明博(大統領)や金滉植(キム・ファンシク=首相)をはじめ、軍歴のない人物は政府関係に就けないようにしなければ」「政治家は延坪島に行って(軍の)訓練を受けて来い」との批判が並ぶ。軍経験が少ないがゆえに言動や行動に歯止めがかからず、過激化して戦争につながると言いたいようだ。日本に留学中の韓国人留学生は取材に対して、北朝鮮に対しては怒りをあらわにするが、戦争だけは避けたいとの思いを打ち明けた。
その一方で、韓国で勤務する女性会社員に聞くと、同僚が「大統領は強硬姿勢を見せていたわりに、何もできなかった」と話していたという。報道によると、韓国軍は相手に応戦する場合は「倍返し」する交戦規定があるようだが、北朝鮮側から170発の砲撃があったのに対して韓国側の応戦は80発にとどまった模様だ。韓国民からは「政府の対応は手ぬるい」「弱腰だ」との怒りが拡大。砲弾が撃ち込まれてすぐ、李大統領が「戦闘を拡大してはならない」という消極的な命令を出した、出さないで政府の対応がばたついたことも批判を増幅させ、初動から非常時対応のまずさを露呈した。
韓国の主要紙「中央日報」で北朝鮮問題と国家安全保障問題を担当する記者に取材すると、「今回の事件は、韓国はまだ休戦下なのだという現実を知らせる強烈な警告になってしまった」と話す。政府は、「戦争だけはごめんだ」と李大統領の「強気路線」を嫌がる人たちと、「そんなに弱腰でどうするんだ」と批判する人たちの、二つの勢力の板ばさみで難しい舵取りを迫られている。この記者は、「当面は、『太陽政策』支持派は肩身が狭くなるでしょう」と、対北強硬派が勢いを増すと考える一方、「ただし韓国内の北朝鮮政策に関する意見はさまざま。対話を重視する人たちも、まだ強い影響力を持っています」と話している。