牛丼にこだわり、メニュー増やせないのが弱み?
低価格の「牛鍋丼」で巻き返しを図ろうとする吉野家だが、その狙いは成功したとはいえない。実際に、2010年10月の売上げ(既存店ベース)は前年同月比3.8%減だった。客数は同10.6%増えたものの、客単価は13.0%減少した。吉野家は「昨年はこの時期にキャンペーンを展開していて客単価も上がっていました。その反動があります」と説明するが、結果的に牛鍋丼の「効果」も限定的なようだ。
安売り競争が起こって間もなく1年。いまやキャンペーン価格だと「250円」もある牛丼。ふだんでも、すき家が並盛280円、松屋は320円と、380円の吉野家よりも安い。それもあって、吉野家は客足を両社に奪われていた。
外食産業を担当するアナリストは吉野家について、「牛丼にこだわり、メニューを増やせないでいるのが弱みだ」と指摘する。ゼンショーも松屋も、「安い牛丼」で集客力を高めて、サイドメニューやトッピング、他のメニューを食べてもらうことで客単価を上げる作戦で売上げを伸ばしてきた。
牛丼チェーンはこれからが正念場なのに、「牛丼一筋」で勝負してきた吉野家はここでの「後手」がなお大きく響くとみられている。
たとえば、松屋はテレビCMで「秋のハンバーグ祭り」と銘打って「牛丼以外」をアピール。すき家もネギやキムチ、チーズなどの「変りダネ牛丼」の品揃えを豊富にしているほか、並盛や大盛以外にもミニ、プチ、特盛りにメガなどの「盛り」のバリエーションを増やすことで、これまでのビジネスマンや男子学生といったコア層に加えて、女性やファミリー層の獲得に意欲的だ。
吉野家HDは「特色を出してやっていきたい」と話しているが、どこまで巻き返せるか。牛丼戦争はまだ続く。