沖縄・尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件の動画流出の波紋が収まらないなか、中国紙が、日本領海の外側にあたる「接続水域」を航行していた漁業監視船の同乗ルポを掲載した。ルポでは、「日本側が中国側を妨害している」などと主張。さらに、「来たいと思えば、いつでも来られる」と、日本側を挑発するとも取れる言動を繰り返していることも明らかになった。
問題の漁業監視船は、中国農業省所属の「漁政201」と「漁政310」。この2隻は、尖閣諸島周辺の領海の外側約22キロの範囲に設定している「接続水域」に2010年11月20日夕方に侵入。約32時間にわたって接続水域を航行し、11月21日夕方に接続水域を離れた。領海には侵入しなかった。
巡視船の数は7隻に達した
この時の中国側からの様子を、広東省・広州の「南方日報」が同乗ルポとして伝えている。同紙が2010年11月22日 に「日本の巡視船は密着して追跡 『いつ離れるのか』と聞いてきた」と題してウェブサイトに掲載した記事によると、記事を書いた記者は「漁政310」に同乗、水域まではおよそ2日間にわたる航海だったようだ。
「航行中、ずっと日本側の巡視船と飛行機による理不尽な妨害を受けたが、我々漁業機構の船団は、すでにある目標に照らして、釣魚島(尖閣諸島)水域内での主権が(中国側に)あることを示し、海洋資源を守り、漁民の安全操業を守る」
などと航海の目的を主張した。
ルポでは、日本の海上保安庁が海域から退去するように求める様子が詳しく描かれている。船団が海域に入ったのは11月20日明け方。それから約1時間後「漁政310」は前方に目標物を発見した。それから間もなくして、偵察機2機が上空で旋回を始めたという。さらにその20分後には、「PL65」(巡視船「くにがみ」)が船団に接近。3時間も経たないうちに、巡視船の数は7隻に達したという。
また、
「偵察機以外にも、たびたびヘリコプターを出動させ、妨害に及んだ」
と、ヘリを飛ばしたことを「妨害」だと受け止めている様子だ。
「来たいと思えば、毎日でも来られる」
中国側と日本側のやり取りも、中国側の領土問題に対する立場を強く反映している。日本側が、「いつ、この海域を離れるのか」と聞いたところ、中国側は
「釣魚島は中国固有の神聖な領土で、今後、この海域での航行を常態化させる」
と反発。「常態化」の意味を問われると、
「来たいと思えば、すぐ来られる。毎日でも来られる」
と開き直ったという。この中国側の答えには、「日本側は、しばらく言葉につまった」という。
記事は、船団が中国貨物船から
「釣魚島は我々の領土で、漁業機構は恐れる必要はない。我々はあなた方を支持する!」
という応援の声を受ける場面で締めくくられている。
ただし、中国メディアがこの種のルポを掲載するのは、初めてではない。衝突事件直後の9月19日には、「環球時報」が「魚政202」の同乗ルポを掲載。日本側が水域から離れるように求めるのに対し、中国側が
「釣魚島は、昔から中国領だ。従って、我々は中国領海をパトロールしている。水域から出て、中国船に対する違法な嫌がらせはやめろ」
などと反論する様子が報じられている。
いずれのケースも、中国側が尖閣諸島の領有権を主張していることを、国内向けにアピールし、日本をけん制する狙いもあるものとみられる。