ドコモ始める「高速モバイル通信」 すぐには買えないこれだけの理由

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   NTTドコモが、次世代のモバイル通信規格「LTE」を用いた通信サービスを始める。「3G」と呼ばれる現在の第3世代の通信システムよりずっと高速で、モバイル機器でもパソコン並みの通信環境が整うことになる。

   ただ、開始時はサービス範囲が限られ、対応機器もデータ通信用のカードとUSBの2種類だけ。スマートフォンの利用はしばらく先になりそうで、すぐにブーム到来とはなりそうにない。

3Gの10倍の通信速度

USB型データ通信用端末を発売する
USB型データ通信用端末を発売する

   スマートフォンの普及や、米アップルの「iPad」のような多機能のタブレット型情報端末が登場し、屋外でも大容量のデータ通信の需要が高まってきた。これら高性能端末は、基本的に無線LAN接続も可能だが、電波を捕捉するには「アクセスポイント」と呼ばれる無線接続サービスを提供している場所に行く必要がある。

   レストランや駅、ホテルなどだが、ポイントから離れて電波が届かなくなると接続できない。一方、移動しながらデータ通信をする場合は、通常3G(第3世代移動通信システム)の回線を経由することになるが、無線LANと比較して通信速度の面で劣る。

   3Gを発展させて高速大容量を実現したのが、ドコモが利用する通信規格「LTE」だ。ドコモの説明資料によると、3Gと比べて技術面では進化しているが、3Gと同じ周波数帯を使用するため「スーパー3G」とも呼ばれている。将来、別の周波数帯を使って超高速通信を実現する「4G」へスムーズに移行するための、「3.9世代システム」との位置づけだ。

   ドコモは、LTEを使った「クロッシィ」という次世代携帯電話サービスを2010年12月24日に開始する。発表資料によると、通信速度は同社の3Gサービスの約10倍、最大で毎秒75メガビットとなる。ドコモ広報部によると、新サービス開始にあたって、東京で約800局、大阪と名古屋でそれぞれ約100局ずつ基地局を開設予定だという。

   「3Gの10倍」のスピードならスマートフォンを使って、移動中でも場所を選ばず高速でネット接続を楽しめる、と思うが、話はそう簡単ではないようだ。

スマートフォン発売は2011年度中

   クロッシィの利用可能エリアを見ると、首都圏と名古屋、大阪の一部となっている。東京では、JR山手線より内側は2011年3月までに大部分がカバーされるようだが、都心から少し離れると対応時期は遅れる模様。名古屋と大阪も、中心部と空港に限られている。

   対応機器も、ノートパソコンなどに差し込んでネットに接続するためのUSB型やカード型のデータ通信端末のみだ。クロッシィ対応のスマートフォンの発売予定を聞くと、「2011年度中に音声端末を提供予定」(ドコモ広報部)という。10年10月に発売した韓国サムスン電子製のスマートフォン「ギャラクシーS」も、「クロッシィ対応機種ではないため、対応予定はありません」とのことだ。売れ行き好調なギャラクシーSなど、需要が急速に伸びているスマートフォンに今の時点で高速通信サービスが付けば「鬼に金棒」といえただろうが、対応型スマートフォンの具体像はまだ見えない。

   実はクロッシィと類似のサービスは既に存在する。UQコミュニケーションズの「モバイルWiMAX」で、LTEとは別の通信方式だが、移動中に高速でのモバイル通信が可能という点は同じだ。2009年2月にサービスを開始し、10年10月末時点での契約数累計は37万3300件(電気通信事業者協会調べ)。スマートフォンの対応機種はない。サービス地域を拡大してはいるものの、全国どこでもつながるようになるには、まだ時間がかかりそうだ。

   ドコモは、クロッシィの契約者数について4年間で1500万件を目指すと報じられている。携帯電話事業者ではないUQと単純に比較はできないが、既に6000万件の契約者をもつドコモといえどもUQの様子を見ると楽観はできないかもしれない。

   ひとまずLTEの商用サービスを始めたが、提供エリアが狭いこと、しかもスマートフォンでは利用できないとなれば、初期段階での大量利用者獲得は厳しそうだ。ライバルたちもLTE導入は決めているようで、「2012年12月のサービス開始目指して準備中」(KDDI広報部)、「次の段階の実証実験に進んでいる」(ソフトバンクモバイル広報部)と、ドコモを追っている。

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