顔写真については公開しないことを望む
週刊現代では、海上保安官が義憤に駆られていたという海保OBも含めた周囲の見方を根拠にしているようだ。とはいえ、保安官が「正義はわれにあり」と胸を張っていたという報道はされていない。むしろ、正しいことをしたとしながらも、公務員にあるまじきことをしたと反省もしている。
一方、週刊文春は、「結局、自己顕示欲が強かった」という識者のコメントなどをもとに、保安官の「正義」に疑問を投げかけている。また、新潮は、小、中学校の同級生の話を引いて、「変わり者」としている。しかし、いずれも根拠がはっきりせず、正義漢ぶったりしたところも明確に示されていない。
どうやら、いずれの週刊誌も確かな根拠はないようだ。
保安官は、マスコミ向けの文書などでは実名入りながら、顔写真については公開しないことを望んだと報じられている。こうしたことが、各週刊誌で、実名や顔写真の扱いが分かれた原因になったのかもしれない。保安官自身も、これだけ騒ぎになった自らの行為について、気持ちが揺れているようなのだ。
保安官の行為については、識者の間でも賛否両論になっている。
元外務省職員の佐藤優氏は、週刊文春で、ビデオ投稿は組織内の違法行為を明かす内部告発とは言えず、官僚による国家機密の漏えいだとして、速やかに裁判にかけるべきと主張した。これに対し、経済評論家の山崎元氏は、ダイヤモンド・オンラインのコラムで、組織内で支持され、自らも名乗り出る新しい内部告発だとして、国民が政府の対応を判断できる公共のメリットがあったことを重く見るべきだとしている。
「英雄」や「英雄気取り」とは言えないとしても、その行為の是非については、今後も論議が続きそうだ。