東京都内の居酒屋が食中毒には触れず「設備改修」などと書いた張り紙を営業停止中に出していたとして、週刊誌が批判している。違法性はないものの、ネット上では、こんな店の話題が度々書き込まれているようだ。
食中毒があったといううわさは、飲食店にとっては死活問題らしい。
公式サイトではお詫び文
「週刊金曜日」2010年11月5日号によると、ワタミフードサービスの居酒屋チェーン店で食中毒が発生したが、一時閉店を知らせる店頭の張り紙では、そのことには触れず、別の理由を挙げていた。張り紙写真を見ると、「設備改修および店内清掃」というのが理由になっているのだ。
食中毒があったのは、東京・世田谷区内の「語らい処 坐・和民」三軒茶屋駅前店。世田谷保健所の生活保健課によると、9月10日に出された宴会料理が原因で、ノロウイルスによる食中毒の症状を訴えた客が20人いた。同13日の立ち入り検査では店内から検出できなかったが、複数の食事グループから同じ遺伝子配列のウイルスを検出したため、同30日から7日間の営業停止処分にした。
ワタミの公式サイト上では、同日付で世田谷区からの行政処分についての文書を出し、店名を挙げたうえで、処分を厳粛に受け止め、再発防止などに努めることを明らかにしている。それにもかかわらず、店側が店頭に出した張り紙で食中毒に触れなかったのは、なぜなのか。
同店に取材すると、店長は「私の方からはお答えできませんので、本社に連絡して下さい」とのことだった。ワタミフードサービスでは、取材に対し、広報担当者が外出中としてまだ回答していない。
店頭で食中毒による営業停止を明示しないのは、問題にならないのか。
違法性ないが、誠意尽くすべきと指摘も
世田谷保健所の生活保健課では、「食品衛生法上、張り紙に明示しなくてはならないという決まりはありません。あくまでも業者の判断ですることです」と説明する。ただ、同区のホームページでは、三軒茶屋駅前店が食中毒による行政処分を受けたことを1週間告知していたとしている。
厚労省の食中毒被害情報管理室でも、「営業停止期間は、施設の清掃や従業員の再教育に当てる期間であり、食中毒を知らせる張り紙をしなかったからといって、問題視することはありません」と言っている。
もっとも、ネット上では、張り紙などで明示しないことに対し、不満の声も強いようだ。2ちゃんねるなどでは、食中毒が起こるたびに、「『都合により休業します』の張り紙あり 食中毒の表記無し」「堂々と社員旅行の張り紙を出す店あり!」といった批判的な書き込みがある。「盆休み」「ガス管工事」などといった理由を挙げる店もあるようだ。
日経レストランの2005年11月17日付サイト記事では、食中毒のクレーム処理について解説する中で、「ある店は、食中毒菌が発見されたことや、その原因、今後店ではどんな対策を取るかを店頭に張り紙をし、お客にすべて伝えた」と紹介。「下手に事実を隠すのではなく、反省して、誠意を尽くすことこそ、お客が求めていることなのだ」と訴えている。
食中毒に触れないことが「隠蔽工作」とまで言えるかは疑問だが、飲食店はいつも消費者からその対応を見られていることを忘れてはならないようだ。