家電エコポイントが2010年12月1日から「ほぼ半分」に切り下げられるのを前に、週末の家電量販店には薄型テレビを求めるお客であふれている。家電マーケティングのBCNの調べでは、10月の薄型テレビの販売台数は前年同月に比べて3.2倍となり、過去最高を記録した。
そうした中で、人気の薄型テレビの在庫が心配され始めている。エコポイントの点数見直しで価格は実質値上げになるが、さらに在庫不足による市場価格の上昇を懸念する向きもある。
駆け込みで前年比最大「5倍」の特需
家電エコポイントは12月から、点数がほぼ半分に減る。たとえば10万円の37型薄型テレビを、エコポイントを使って今月中に買えば、1万7000点が付与されて8万3000円で買える。それが12月には8000点に減るので同じ商品が9万2000円になってしまう。消費者にとって、9000点の差は大きい。そのため、家電量販店にお客が殺到しているのだ。
家電量販店大手のコジマは、2010年11月6、7日の売上げが前年の第1週に比べて約2倍を記録した。「薄型テレビは付与されるエコポイントが大きいこともあって、1番の伸び」という。
また、ヤマダ電機が11月14、15日の実績を前年と同じ曜日で比べたところ、薄型テレビは5.5倍伸びた。「来年の地デジへの切り替えもあり、平日から混みあっている」と話す。 デオデオや石丸電気などを展開するエディオングループも「前年の4~5倍ほどで、好調です」という。
調査会社のBCNは、薄型テレビの10月の販売状況を、「買い替えを考えていた消費者が動いた」とみていて、11月には駆け込み消費がさらに増して「10月を凌ぐ」と予測している。
安くていいモノものは早い者勝ち
「過去最高」の売れ行きをみせる薄型テレビだが、そうなると気になるのが在庫だ。人気の商品はすでに在庫切れが心配されており、消費者をやきもきさせている。BCNは「駆け込みが急増して需要に応えきれずに、販売店が在庫切れに陥るかもしれない」と懸念。「販売台数が頭打ちになる恐れがある」とも話している。
在庫不足となれば価格の上昇が心配だが、価格について家電量販店は、コジマが「お答えできません」としたほか、ヤマダ電機が「値上がりはありません」、エディオングループも「在庫は十分用意していますし、値上げはありません」という。ビックカメラも「在庫不足を理由に値上げすることはありません。市場価格を見ながら、適正な価格を決めています」と、各社が値上がりを否定している。
しかし、カカクコムの購買支援サイト「価格.com」で、たとえば売れ筋の東芝「LED REGZA 42インチ」の価格変動履歴をみると、11月9~11日のわずか3日間で2000円近く上昇していて、カカクコムでは「10月のエコポイントの見直し以降から、高いものでは2万円ほど上昇している商品もあります」(広報室)と話す。
ただ、これにはちょっとした「カラクリ」があって、「実際には同じ商品でも値段の安いところから売れていくので、後から買う消費者の目には結果的に高いものが残って、値上がりしたように見えるんです」と説明する。
また、約4000の家電量販店を調査するジーエフケー マーケティングサービス・ジャパンは、「薄型テレビの平均価格は9月に8万円を割り込んでから一進一退でしたが、ここ最近で8万円近くに戻ってきています」と話している。
やはり、安くていいモノは早いもの勝ちのようだ。