クマの駆除に対する抗議がヒートアップしている。SNS「ミクシィ(mixi)」では、人里に現れたクマを射殺したことについて、自治体に抗議の電話やメールを送ろうという呼び掛けが始まった。
コメント欄には「あいつらが嫌になるくらい電話してやります」「山に入る人間も片っ端から殺せばいいじゃん」などという過激なものまで出ている。
町役場に全国から100近い電話やメールの抗議
畑や畜舎を荒らすクマの被害が2010年は全国的に続出し、人里に現れる例も後を絶たない。そうした中で、「ミクシィ」内にある2010年11月10日付けの日記がネットで話題になっている。鳥取県内の熊が容赦なく殺され始めていて、それを阻止しよう、という内容だ。「動物の命を命とも思っていない」として該当の町役場の電話番号とメールアドレスを掲載。また、この抗議の文章をコピーし、ネットで広めて欲しいと訴えている。熊が人里に降りてこないよう山に餌を撒き、針葉樹を間伐し広葉樹を植える努力を行政はすべきだ、というのだ。
ターゲットにされているのは八頭町。鳥取県は07年から捕獲したクマを人間への恐怖心を植え付けて放す「学習放獣」を進めてきたが、2010年8月にはツキノワグマに襲われた男性の死亡事故が起きた。また、「学習放獣」をしていないものが殆どのため、県内捕獲の6割を占めるという八頭町は射殺に踏み切った。
町役場は取材に対し、
「出没するクマがあまりに多く、町民の命が奪われる前に射殺するのはやむをえない」
と説明する。しかし、同町がクマを射殺したというニュースが流れると、全国から100近い電話やメールの抗議が殺到。「クマがかわいそう」というものから「ツキノワグマは絶滅種だ」というものまで様々だった。
「ミクシィ」の呼び掛けにコメント欄には、
「抗議の電話します。転載だけでなく 自分が まず 行動ですね」
「殺される熊さん達を想うと俺が泣きそうになった」
という賛同のカキコミのほか、
「人里に下りてくるから殺す? だったら山に入る人間も片っ端から殺せばいいじゃん」
「手を変え品を変えあいつらが 嫌になるくらい電話してやります」
「吠え殺すのではなく、褒め殺すくらいの方が、相手は聞いてくれます」
などといった物騒なものまである。
「クマさんのためにドングリを集めよう」活動
まるで人命よりクマの命が大切だ、と読めるようなコメントに対し、ネットの掲示板やブログには「異常ではないか」という意見が多数出ている。どうして彼らはこれほどまでにクマの命に執着しているのだろうか。
東京にある動物愛護団体に話を聞いてみると、愛護団体や動物を守ろうとする人の思いや立場は様々で一概には言えないが、過激な言動をする人達がいるために、動物愛護の本来の姿が歪んで伝わってしまうことを恐れている、と嘆いた。
「クマに限らず犬、猫に関しても、人間関係が上手く築けない人達が動物に拠り所を求め、どっぷりはまってしまう。その結果、人間が大切か、動物が大切かの後先がわからなくなってしまい、過激な発言や行動に走るということが、たまに見受けられます」
と打ち明ける。
また、動物に関する知識の無い人もいて、人里に来ないように「クマさんのためにドングリを集めよう」と活動したが、集まったドングリはクマが食べない種類のものだった、ということもあった。
結局は人間同士のコミュニケーションと理解が重要で、クマはどんなに危険なのか、住民はどれほど不安なのか、クマを射殺しない方法はないのかなど、話し合いの場を多く設けることが必要だと愛護団体の職員は話している。