海保?検察?それとも…それぞれの背景
現在、映像資料は石垣海上保安部と那覇地検、最高検で厳重に保管されている、とされる。海上保安庁本庁などへ送られた映像データや複製DVDは、関係大臣や省庁幹部らが視聴の後、回収・廃棄(消去)したことになっている。
海保にも検察にも、船長釈放について菅政権へ不満が渦巻いているとの指摘もある。「命がけ」で撮影・捜査した海保関係者らが、映像「公開」によって、自分たちが逮捕したことの正当性を訴えたい、という気持ちになっても不思議ではないのかもしれない。
検察としても、船長釈放について菅政権から「検察当局の判断」と責任を「押し付けられた」格好となっている。検察側は起訴する気だったが、中国の反発を恐れる政府側から介入があったとの見方は広く指摘されている。本人は「記憶がない」としているが、仙谷由人・官房長官が野党議員に「(船長を起訴したら)(横浜市で開催予定の)APEC(アジア太平洋経済協力会議)が吹っ飛んでしまう」と話した、との「暴露」も国会であった。
映像を見れば、「船長釈放の判断は、刑事事件として判断する検察が行ったものとしては不自然で、政治介入があったとの状況を浮き彫りにできる」と考えた検察関係者がいた可能性も否定できない。
もっとも、「回収・廃棄」されたことになっている映像の扱いについても詳細不明な点は残り、海保・検察以外の流出ルートもあり得そうで、政治家の関与を疑う声も出始めている。
ちなみに、流出ビデオの投稿者名は「sengoku38」で、仙谷長官を皮肉る意図が透けてみえる。ネットでは「38」の「謎解き」も関心を集めている。