中国漁船と海上保安庁の船の衝突場面が映った「尖閣ビデオ」がネットに流出した。ごく一部で保管されているはずの映像がなぜ漏れたのか。船長釈放について「他人ごと」のような態度をとる現政権への憤りが背景にあるとの指摘もある。流出ルートは、映像が保管されているとされる海保、検察なのか、それとも……
「正義の味方、月光仮面がいる」。今回、「尖閣ビデオ」を流出させた人物について、元内閣安全保障室長の佐々淳行さんはこのように高く評価した。2010年11月5日、情報番組「とくダネ!」(フジテレビ系)でコメントしたものだ。
「よくやってくれた」の声も
流出ビデオのワンシーン
佐々さんは、「あさま山荘事件」(1972年)の現場指揮官を務めた人物として知られる。警視庁などのテロ捜査関連とみられる資料が流出している事案については、「重大な失態」「言語道断」と厳しい意見を述べたが、今回の尖閣ビデオ流出については「よくやってくれた」と快哉を叫んだ。
そもそも菅政権がビデオを非公開としてきた姿勢の方がおかしいと指摘し、流出させた人物が今後、公務員の守秘義務違反などに問われることになっても「弁護の側に回りたい」といっている。
「ビデオを見れば中国漁船側に問題があることは分かるはずなのに、一般公開しないのは中国側に配慮したためだ」との指摘は以前からあり、今回の流出の「主」は、そうした流れを受け、「義憤にかられ」流出させたのだというわけだ。
「真実追究」のための内部告発を肯定する考えは、昨今のイラク戦争関連の米軍機密文書公開などで知られる海外サイト「ウィキリークス」の「活躍」などともに広がりつつあるとの指摘もある。
それにしても、流出元はどこなのだろうか。
尖閣ビデオは、7分弱に編集されたものが11月1日、国会の衆参予算委の理事ら約30人に、機材持ち込み禁止の上、限定公開されたばかりだ。今回の流出ビデオは、編集前とみられる6本計約44分もあり、国会公開映像が流出したわけではない。