介護保険料安くする「奥の手」 同居親子に世帯分離が広がる?

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   引っ越しをしたら役所へ転入届を提出するように、世帯の構成が変わった場合も届け出なければならない。同じ家に一緒に住んでいた親子が、子の結婚を期に、同居は続けるが世帯を別々にする「世帯分離」もその一つだ。

   最近では、保険料を抑えるための手段として使われることがある。

住民税非課税世帯が減額対象に

   世帯分離は、文字通り住民票上の世帯を分けること。住民基本台帳法第25条の「世帯変更届」に定めがあり、同一住所内でも生活面で生計を別々にしている場合、各自治体に申請する。受理されるにあたっての細かな条件は、自治体によって異なるという。

   ネットの質問サイトには、「世帯分離を行うと、保険料などが減額されるという話を聞いた」という書き込みが見られる。これに当たると思われるのが、介護保険料の負担を減らす方法だ。

   東京・千代田区の場合、低所得者に対する介護保険料の減額措置がある。区役所によると、その前提条件として「住民税の非課税世帯であること」を挙げた。住民税は、前年中の所得などで課税、計算される。

   千代田区によると、65歳以上の保険料基準額は、年額5万400円。これが、世帯全員住民税非課税の場合、仮に公的年金の収入がある場合でも、課税年金収入額とそれ以外の所得金額の合計が80万円以下なら、介護保険料は年額2万100円と通常より安くなる計算だ。

   そこで、例えば退職して年金以外の収入のない両親と、仕事をもっていて給料を得ている子が同居している場合、それぞれを別の世帯として分離すれば、理論上は両親が支払う介護保険料が減額されることになる。両親2人分の保険料となれば、差額は年間約6万円と、無収入であれば決して小さくない金額だ。

人口減でも世帯数増加の自治体も

   ただ注意点もある。世帯分離はそもそも保険料減額のために設けられた制度ではない。自治体によっては、あまりに無理な申請は却下する可能性もある。

   また、低所得者軽減に該当するかどうかは、その年の4月1日の状況によって決まるという。世帯分離したからといってすぐに軽減措置がとられるわけではなく、新しい年度まで待たなければならない。

   世帯分離が増えているとの報道もある。10月18日付の北國新聞によると石川県では、2004年度に金沢や羽咋など7市町で世帯分離の届出数が1069件だったのに対し、09年度は1352件に達した。また2000~09年の10年間、県内の人口は減少したが世帯数は逆に増加したという。世帯数増は世帯分離も影響しているようだ。

   総務省が出している都道府県別の人口と世帯数のデータを見ると、2000年~09年の10年間、福島県や奈良県、島根県、徳島県、宮崎県などで人口は一貫して減少しているにもかかわらず、世帯数は逆に「右肩上がり」で増え続けているのだ。

   その理由について福島県庁統計調査課に取材すると、人口の減少は県外への流出が原因としたが、世帯数の増加については「具体的な要因は分からない」と言う。世帯分離の増加が背景にあるのではとの問いにも、回答を避けた。

   奈良県庁統計課も、世帯数の増加について細かな分析はしていないとする一方、「奈良県に限らず一般的な話として」と断ったうえで「例えば結婚を機に世帯が分かれたり、子どもが親元を離れて単身世帯ができたりして世帯数増加につながったのかもしれない」との見方を示した。ただ福島同様、世帯分離がなぜ増えたかについては「分からない」とのことだった。

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