「クマ撃ちで金儲け」はウソ 実態は「命がけのボランティア」

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   街中に出てきて人を襲うクマを駆除する猟友会に対し、「クマを殺すな」といった立場から様々な批判が出ているが、猟友会ではクマの駆除は命がけの仕事、手当も少額でほとんどボランティア状態、もっと実態を知ってほしいと反発している。実際、2010年10月31日には、猟友会のハンターが襲われた。また、「猟友会はクマ肉を売って儲けているのではないか」と疑いを持つ人もいるが、肉も毛皮も売れることは殆どないという。

   10月31日午前、長野県の大町市平の神社にクマがいると住民から市役に通報があった。

弾当たっても急所はずせば逆襲される

   市職員や大町署員、地元猟友会らが周囲を捜索。雑木林に潜むクマが見つけた猟友会の男性(63)が発砲したところ、クマはひるまず襲ってきた。男性は両腕を引っかかれたり噛まれたりして軽い怪我をした。県によると100キロもある、特別大きなツキノワグマで、最初の発砲で弾は当たったが、倒れないでそのまま向かってきたのだという。

   大日本猟友会によると、クマの駆除にはたとえ銃を持っていたとしても常に危険を伴う。非常に頭のいい動物で、ハンターを待ち伏せして後ろから襲うこともあるのだそうだ。

   特にヒグマの出る北海道ではこの5~6年で猟友会のハンター2人が死亡、大けがをする人も毎年のように出ている。北海道猟友会によると、ヒグマは体重が300キロぐらいの個体もおり、数発で仕留めきれなかった場合はベテランのハンターでも逆襲されて死亡することがある。「遠くから見ると可愛いかも知れませんが、人間は顔を叩かれただけでも、首がちぎれたり、下あごを持っていかれます」と語る。

   さらに、「射殺しないで麻酔銃で撃てばいいというけど、空想の話でしかない」。麻酔の量が多すぎるとクマが死んでしまうし、適量だったとしても動けなくなるまで10分程度かかる。麻酔銃の射程距離は30メートル程度。ヒグマは時速40キロで走ることが出来るので、麻酔が効く前に、数秒でハンターのところにやってきて襲われてしまう。

朝晩の見回りで1日千円

   命がけの仕事にも関わらず報酬は雀の涙だ。北海道の自然環境課によると、市町村によってマチマチだが、ハンターへの手当は通学路や畑を朝晩見回りして1日千円という地域もある。しかもガソリン代は出ず、1日で500円以上になることも。一頭仕留めたら1~3万円の手当がでるところもあるそうだが、1人で年間何頭も仕留められるものではないので、ボランティアのようなものだ。

   一方で、自然保護団体のブログには「有害捕殺が増えているのは、クマノイは80万円、肉10万円、毛皮は10万円で売れるから」と書いてあるものもある。J-CASTニュースの記事「『クマを殺さないで!』批判殺到 猟友会『現実分かっているか』と反発」(2010年10月29日付け)にも同様のコメントが寄せられた。

「クマ肉売れる」は「神話」

   駆除したクマの死骸をどうするかは県によって異なるが、長野県では、自家消費するのはいいものの、売ってはいけないことになっている。

   北海道では、胃や歯などは生態系の分析のために県に献体しなければいけない。それ以外の部分については「有効活用してください」と市町村に伝えている。しかしハンターに回ってきても、殆ど商品価値がないという。

   肉はクセがあるので買い手はつかず、300キロの巨体でも売れるのは10キロ程度、子どもの小遣い程度にしかならない。漢方で使われる胆嚢も、中国産が出回っている現在では買ってくれる製薬会社もない。数十万円する毛皮やはく製もかつては社会的ステータスとして富裕層にもてはやされたが、20年ほど前からは県に「引き取ってくれ」と問い合わせが来るほど不人気だという。中華料理に使われる「クマの右手」も、北海道の担当者は「売れたと言うことは聞いたことがないですね」ということだった。

「クマの駆除を行っているのは市町村で、猟友会は『従事者』。少ない手当で、お願いベースでやってもらっているというのが現状なのに、『クマの肉が売れるから』という神話みたいなことを言われるとハンターの方々のやる気が削がれてしまいます」

と話している。大日本猟友会も「猟友会会員は昭和の時代には40万人いたが、今は10万人しかいません。みな、人命と農林被害防止のためにやっています。儲かるなら、会員ももっと増えていますよ」ということだった。

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