アルコール分0.00%のノンアルコールで、ビールテイストの清涼飲料の売れ行きが絶好調だ。いまやビール各社の業績を押し上げるほど、成長しつつある新ジャンルとなった。
2010年夏は猛暑だったこともあってビールの出荷も伸びたが、ビールテイスト飲料はそれをしのぐ勢いで、アサヒビールの「ダブルゼロ」やキリンビールの「キリンフリー」、サントリーの「オールフリー」はいずれも販売計画を上方修正した。ビールテイスト飲料を飲む機会は「運転するとき」などに限られていると思われていたが、意外な飲まれ方があることが背景にあるようだ。
仕事中に飲む人5%、料理しながら22%
マーケティング調査のドゥ・ハウスの「ビールテイスト飲料」に関するアンケート調査(20~69歳の男女2757人が回答)によると、ビールテイスト飲料を飲む層は、月1回以上(ほぼ毎日から月1回程度)は、男性では20歳代が24.2%と多く、年代が上がるにつれて、飲んでいる人が少なくなる傾向にあることがわかった。
一方、女性で最も飲んでいる層は50~60歳代で12.0%だった。男性とは逆に年代が下がるごとに減っている。女性の場合は通常のビール系飲料とビールテイスト飲料の飲料頻度がほぼ同じ傾向にあるという。
また、市場調査のトレンダーズが、週に2本以上の頻度でノンアルコールビールを飲んでいる20~50歳代の男女400人を対象に行った「ノンアルコールビール飲用実態調査」では、ビールテイスト飲料を飲む機会として、全体の22%が「料理をしているとき」と答え、女性に限ると28%が「ノンアルコールビールを飲みながら料理している」と答えている。さらに「掃除や洗濯をしている合い間」と回答した人は全体で11%、女性に限ると15%いた。
主婦が家事の合い間に、愛飲しているわけで、「家事でひと息つきたいときにビールだと後ろめたいが、ビールテイスト飲料なら気がねなく飲める」(50歳代の主婦)ということらしい。
これまでビールを飲むシーンとはあまりいえなかった、「休日の朝や昼」(32%)や「スポーツのあと」(19%)と答える人も少なくなく、さらには「仕事中」(定時内)という人も5%いた。会社員が、お昼の食事のときや残業中に飲むことも増えているようだ。 そこからは、若い人を中心にビールの味わいと炭酸飲料の清涼感の両方の味わいを楽しんでいるようすがうかがえる。
自宅での晩酌でもノンアルコール
前出のトレンダーズの「ノンアルコールビール飲用実態調査」によると、ビールテイスト飲料を飲む理由として、「ビールを飲んでいる気分が味わえるから」との声が寄せられている。
また、居酒屋などでも、「周囲が飲んでいるのに、ひとりだけ飲まないと場をしらけさせるが、ノンアルコールビールであれば、多少解消される」のではないか。
ノンアルコールビールが置かれている場所も広がっていて、高速道路サービスエリアやパーキングエリア、クルマで来店する機会の多いファミリーレストラン、ゴルフ場、遊園地やテーマパーク、また結婚式場でもアルコールが飲めない来場者のために置いている。
トレンダーズの調査では、ノンアルコールビールを飲む機会としては、「自宅での晩酌」が50%で最も多く、次いで「お風呂上り」が44%だった。「運転前・運転中」と答えた人は23%。
「アルコールが飲めないとき」に飲まれていると思われがちなノンアルコールビールだが、じつはアルコールが飲める機会でもノンアルコールビールを飲んでいる人が多いのだ。