「ナノは今までなかった低価格自動車を世界に送りだした。ナノは途上国の購買力に合わせた世界で最も手頃な自動車だ。多くの選択肢を他の国に広げ、先進国に価格破壊をもたらすだろう」
インド最大の自動車メーカー、タタ自動車のラビ・カント副会長は2010年10月26日、東京都内で開いた日本経済新聞社主催の世界経営者会議でこう強調した。
タタグループが2009年に売り出した2500ドルで排気量624ccの軽自動車のナノはインドの軽自動車市場で短期間に75%のシェアを獲得するなど大人気。2輪車より排気CO2が少ないなど環境にやさしいクルマで、欧州の基準に照らしても安全という。これからは欧米など先進国市場に投入する方針を明確した。
タタグループのナノ投入には伏線がある。
インドでハブ&スポークの交通モデルが動き出し、ハブから小さな村に荷物を運ぶのに必要だと考え、2005年にミニトラックを開発して投入。たちまち85%のシェアを獲得した。インドでスズキは政府と組んで小型乗用車で成功したがタタは商用車で成功した。
「その次に考えたのが購買力の低い途上国の人でも買える新しい概念のクルマだった」--。ラビ・カント副会長は、「必要は発明の母」と強調していた。