「あったかないかも含めて、こちらで情報はない」
ところが、週刊新潮の2010年10月21日号で「国辱シーン」とされた船長の態度については、海保の報道官は、明確な否定を避けた。
新潮の記事では、中国漁船の船長は、巡視船が近づいてくる間、何かを怒鳴りながら、中指を突き立てる挑発行為をしていたと報じている。これは、ビデオを見た菅直人首相の側近からの証言だという。海保の報道官は、この記事について、こう答えたのだ。
「秘密事項ですので、捜査部門しか知りません。そのような行為があったかないかも含めて、こちらで情報はないです。事件の故意性の有無に関わる捜査上の問題であり、コメントは控えさせて下さい」
なんとも意味深な説明のようにも思える。
また、新潮では、船長は相当量のアルコール類を飲んでいて、異様に酒臭くふてぶてしい態度だったとしている。この点については、「『船長は正常に判断できる状態だった』という模範解答を与えられ、統一してこう答えてくれと言われています。後は、ご想像にお任せします」。結局、飲酒していたかについて、明確な否定はなかった。
産経新聞が漁船が加速して衝突したと28日に報じたことについては、「物理学的に考えると、同じスピードでは後ろからぶつかりませんよ」とこれも否定しなかった。
法務省では、ビデオを編集したことについて、今後の取り締まりに支障がないよう考えたことや関係者のプライバシーなどを配慮したと説明している。この意味について、海保の報道官は、「複数の巡視船がどんなフォーメーションを組んだかが分かってしまいますし、被疑者や捜査員の顔が出てしまうからです」と説明する。那覇地検は、公益性の高い必要な部分だけ提出したという。
ただ、中国漁船の船長らから抵抗されたり、失礼なことをされたりといったトラブルの報告は受けていないとしている。