大阪府の橋下徹知事がぶち上げている「大阪都構想」に賛成する府民が反対派を上回った。朝日新聞と朝日放送(ABC)が共同で行った世論調査によると、賛成43%、反対28%だった。ただ、「構想について、橋下知事の説明が不十分」とする府民が69%と、「十分」の15%を大きく上回っている。
大阪都構想は、橋下知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」が提唱。実現に向けては統一地方選や大阪市議選での過半数獲得をめざしているが、政治色が強すぎて、府民に具体的なメリットが伝わっていないようなのだ。
「府と市の仲が悪いだけでは」
大阪府の橋下知事はこれまで、大阪府と大阪市の「行政の二重構造」を問題視し、その打開策として、機会あるたびに「大阪都構想」を訴えてきた。たとえば、府民体育館と市民体育館など「府立」と「市立」の名前のついた施設は少なくなく、これらが「ムダ遣い」になると指摘する。
公共交通網の整備や、空港や港湾施設の整備などの事業でも、府は市の了解なしにはなにもできない。こうしたことが「いまの大阪は、知事が決めているのか市長が決めているのかさっぱりわからない」(橋下知事)という事態を招き、大阪の停滞を招いていると主張する。
ただ、そういった説明だけでは府民にはなかなか響かない。「ハコモノ」が多くてコストがかかるというのであれば、それを統合・廃止すればいいだけだし、公共事業についても府民の目には「府と市の仲が悪く、意思疎通がはかれていないだけ」に見えていて、それらが「大阪都構想」という大がかりな枠組みの変更はいらないかもしれないと思わせている。
つまり、府民にはメリットが伝わっていないのだ。
「区長」を選んで住民の声を反映
こうした中で、大阪維新の会は「大阪都」の実現がもたらす府民のメリットについて、「二重行政をなくす仕組み自体が住民のメリットなのです」と説明する。
「大阪都」の下に置く特別区に、「区長公選制」を導入。選挙で区長を選出して、府民の声が届くようにすることがメリットというのだ。
現在、大阪市内の区長は役人で、予算の裁量も数千万円しかない。大阪維新の会は、「いまでも規模の大きな区は独自で予算を編成すればよく、わざわざ区の上に存在する大阪市に予算編成してもらう必要も理由はない。大阪都構想の実現は、区民(府民)が自らの住民サービスを決められる仕組みにするということ」と主張する。
こうした中、大阪府の自治制度研究会は2010年9月に、「大阪における新たな大都市制度のイメージ図」を明らかにした。この研究会は「大阪都構想とはまったく別の研究会」(大阪府政策企画部)としているが、イメージ図は広域自治体(大阪都)と、住民生活に密着した基礎自治体(特別区)の役割を明確にするという「大阪都構想」にそった内容といえる。
広域自治体では、都市計画や産業・景気、雇用政策といった分野での成長戦略や、広域インフラの整備、病院や大学・高校、体育館など専門性の高い分野などの業務を担い、基礎自治体は府民生活に密着した福祉や子育て、保健・衛生、環境、義務教育、公営住宅、地域の安全と防災などを担うという構想になっている。