特別会計(特会)を対象にした「事業仕分け第3弾」の2日目となる2010年10月28日、「全国に不採算空港を大量に作る原因になった」などと批判を浴びることも多い、いわゆる「空港特会」(社会資本整備事業当別会計空港整備勘定)についての議論が行われた。だが、空港特会の規模は06年度をピークに縮小を続けていることから、仕分け人も攻めあぐねている様子だった。だが、空港の需要予測については厳しい指摘が相次ぎ、2本目の建設が検討されている福岡空港の滑走路については、予算規模の縮小との整合性を問う声もあがった。
06年度をピークに縮小続く
空港整備勘定は、利用客が支払う施設利用料や、航空会社が支払う着陸料を財源に、国や自治体が管理する空港の整備を行う仕組みだ。空港整備勘定をめぐっては、「無駄な地方空港が作られた元凶。そのせいで羽田や成田の着陸料が高止まりし、国際競争力を削いでいる」という声も根強い。だが、空港整備勘定は06年度の5726億円をピークに減少を続けており、10年度は4593億円。11年度の概算要求額は、これより27.7%も少ない3319億円だ。
これは、羽田空港のD滑走路や新国際線ターミナルのオープンで、同空港の拡張事業が一段落したことによるものだ。また、国交省は、国が管理している26空港の民営化を目指す方針を繰り返し口にした。
このため、「なぜ、これまで歳出を削減できなかったのか」という声はあったものの、現段階で国交省が進めている政策そのものを真正面から否定するような声は、ほとんど見られなかった。
だが、やり玉にあがったのが、福岡空港の2本目の滑走路の建設計画だ。福岡空港は1本しか滑走路がなく、近く処理容量を超えるとの見方が有力だ。現在の処理容量は14万5000回だが、国交省OBなどが天下っている財団法人「運輸政策研究機構」の需要予測によると、17年度には16万5000回にまで増えると見込まれている。これが正確だとすると、あと5年もせずに「パンク」してしまう計算だ。
だが、この需要予測に対して、仕分け人の川本裕子早稲田大学教授が、
「需要予測のズレには辟易としている、これと歳出削減とは、どうリンクするのか」
と噛みついた。実は、「運輸政策研究機構」は02年時点で、北九州空港の利用者数を年間283万人だと見積もっていたが、08年度の実績値は119万人。このことから、福岡空港の利用が伸びるという前提に疑問符を付けた形だ。
「借地代なければ、福岡はむちゃくちゃいい空港」
この点は、午前中の「費用便益分析」の議論でも、仕分け人が厳しく指摘しており、国交省の津川祥吾政務官は、今後、同法人に対して発注を行わないことを明言したばかりだ。
国交省側は
「(福岡の2本目については建設中・計画中ではなく)調査中」
と釈明する一方、川本氏は
「十分再考の余地があるということでいいですか?」
と、クギをさしていた。
2本目の滑走路建設計画には暗雲がたちこめた形だが、仕分け人の民主党の緒方林太郎衆院議員(福岡9区)が、
「(赤字の原因になっている)借地代さえなければ、福岡は、(アクセスなどの面で)むちゃくちゃいい空港。ぜひ、ぜひ頑張ってほしい」
とフォローする一幕もあった。
また、
「特会があるから、これだけじゃぶじゃぶお金が出てくるとは思われかねない」(長妻昭・前厚労相)
と、空港整備勘定について、この日に12人の仕分け人が下した結論は「廃止」だった。