女性限定メニューは「男性差別」か――著書「希望格差社会」などで知られる中央大学の山田昌弘教授(家族社会学)のコラムが話題となっている。
「時々、男性差別と思えるようなものが気になってくる」として、山田教授は「レストランの女性料金とか女性限定メニュー」を挙げる。
「結局は、偏見に基づく一種の差別である」
東京新聞夕刊の1面コラム「放射線」に2010年10月21日に掲載された文書だ。教授は、なぜ男性だという理由だけで料金が高かったり、限定メニューを食べられなかったりするのか、と疑問を提示している。男女共同参画に関わる中での感想のようだ。
「女性限定」を導入する理由として、「女性を呼び込みたいからとか、女性の方が収入が低い」などと指摘されているが、教授によると「結局は、偏見に基づく一種の差別である」。男性優遇システムは批判されるが、女性優遇の方は批判されず残り続けるとも指摘する。
女性に対しても「喜んでばかりいられない」として、「女性は経済力がなくて当然という意識を間接的に広めることになるからだ」とも注意喚起している。そして、「レディーズセット」を男性にも開放する店ばかりになることを「切に願っている」と結んでいる。教授の実体験では、女性限定メニューを教授が注文すると、2軒に1軒の割合で「いくら粘っても」断られるのだそうだ。
「レディーズセット」や「レディースセット」、「女性限定」の文字でインターネット検索すると、スイーツ店やレストラン、居酒屋、マッサージ、ラーメン店などさまざまな種類の店が同サービスを実施しているのがわかる。中には「レディースセット検診」をうたう自治体もあった。
「男女同権は女性を幸福にしない」(PHP研究所)などの著書がある女性史研究家の山下悦子さんに、同コラムの感想を聞いてみた。
「女性限定あって良い」の声も
山下さんの考えでは、「女性限定」は「あっても良い」。ただし、「女性はまだまだ弱い存在なのでこうした特典があっても良い」などの「女性の味方と称する人たち」と同じ理由からではない、という。
山下さんは、男女の差異を認めない「平等論」に反発を感じているそうだ。差異を認めた上での共生を訴えている。「女性限定メニュー」は、「量は少なく種類は多く」や「彩りがきれい」など多くの女性のニーズを反映している面もあり、値段の安さという側面だけを強調する必要はない、との意見だ。
食事や飲酒の好みや量は、男女ともそれぞれ個人差があるのも事実だが、大まかな傾向としては、例えば「飲み放題で男性の方がたくさん飲むから値段設定も男性の方が高い」店があっても問題はない、ともいう。勿論、例外(大量に飲む女性など)が少なからず存在するのは織り込んだ上で、だ。
山田教授が「レディーズセット」の男性への開放を「願っている」点についても、「賛成できない」。「種類は少ないけど量は多く値段も安い」などの「男性限定メニュー」があっても良いし、小食の男性向けや高齢者向けの「限定サービス」も可能だと指摘し、「『女性限定』を男性が食べる必要はない」と断じた。
また、東京都内で働く20代~40代の女性会社員数人に同コラムを読んでもらった上で感想を聞いてみた。「女性限定」の存在が「女性は経済力がなくて当然という意識を間接的に広めることになる」との山田教授の指摘に対しては、いずれも「ピンと来ない」という反応だった。そして、「女性限定」はあって良いし、「男性限定」があっても「差別されている」とは感じない、という感想だった。
ネットの2ちゃんねる上の意見をみてみると、男性としてもデートのときに「女性限定メニュー」の存在は費用の面などで便利だというコラムへの「反論」や、指摘に目新しさはないが正論だとする「肯定論」などが並んでいた。