2011年4月にパナソニックの完全子会社となる三洋電機が赤字事業の整理に目途をつけた。赤字事業として最後まで残っていた小型モーター事業を売却する方向で最終交渉に入ったからだ。
三洋は2010年5月に物流子会社を投資ファンドに売却。7月には半導体事業を米国の半導体メーカーのオン・セミコンダクターに売却することで合意した。いずれも三洋の「お荷物」となっていた不採算の赤字事業で、最後まで残っていたのが携帯電話などに用いられる小型モーター事業だった。
世界市場では一時、三洋が約4割のシェア
三洋にはエアコンなどに用いる大型のモーター事業などがあるが、こちらは黒字のため事業を継続する。今回、撤退するのは携帯電話などに用いる振動モーターと呼ばれる小型のモーターで、世界市場では一時、三洋が約4割のシェアを占め、トップメーカーだった。
しかし、携帯端末の価格競争で小型モーターの価格は下落。2010年3月期の売上高は133億円あったが、07年から3期連続で営業赤字となっていた。
一方、売却先と見られるのが日本電産。京都市に本社を置く小型モーターの世界大手で、ハードディスクドライブ(HDD)などデジタル機器向けの小型モーターを手掛けている。関係者によると「三洋の小型モーター事業を安く買って立て直せば、事業拡大を図れる」と判断したらしい。
日本電産は積極的にM&A(企業の合併・買収)を進める企業として知られており、今回の交渉については「複数のM&Aを進めているが、ノーコメント」としている。具体的な売却額などは未定で、今後両社が調整することになる。
車向けリチウムイオン電池は両社が手掛ける
三洋の小型モーター事業は100%子会社の三洋精密(長野県上田市)が製造しており、三洋精密の約300人の雇用は日本電産が引き継ぐ方針という。三洋は日本電産による雇用維持を評価し、最終的に売却を決断したとみられる。トップシェアを誇ったものの、ジリ貧の事業を手放したい三洋と、その事業再生でさらなる飛躍を目指す日本電産の思惑が合致した形だ。
不採算の赤字事業の整理に目途をつけたことで、三洋は懸案となっているパナソニックとの重複事業の見直しを本格化させる。白物家電はパナソニックブランドに統一する方針だが、白物家電を手掛ける三洋コンシューマエレクトロニクス(鳥取市)や三洋アクア(大阪府守口市)などの製造拠点をどうするか――などが焦点になる。洗濯機や冷蔵庫など、両社の役割分担をどうするのかなど、調整が必要となる課題は多い。
さらに注目されるのは、三洋が強みを持つ太陽電池やリチウムイオン電池などを活用した環境分野の戦略だ。次世代のハイブリッドカーや電気自動車(EV)など自動車向けのリチウムイオン電池は両社が手掛けており、重複を避けながら、いかに相乗効果を高めていくか。パナソニックが三洋を完全子会社とする最終目標はそこにあり、真価が問われることになる。