経営学者ピーター・ドラッカーと高校野球というユニークな組み合わせの内容でベストセラーとなった、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)。テレビアニメ化も決まるなど、絶好調が続いている。
「もしドラ人気」にあやかろうというのか、似たようなタイトルで、デザインにも「萌え系」女性を使うといった「類似本」も出始めた。「二匹目のドジョウ」狙いは当たるだろうか。
ドラッカーの代わりにバフェット
もしドラは2009年12月4日に発売された。都立高校野球部のマネジャーを務める女子高生、川島みなみがドラッカーの著書と出会い、そこから学んだマネジメントの極意を野球部に実践していく内容だ。略称で呼ばれるほど長々とした書名。表紙は青空の下、川辺で微笑む制服姿の女子高生のイラストが描かれ、「経営の神様」ドラッカー関連本とは思えない意外感がある。
発行元のダイヤモンド社が運営する、もしドラ公式サイトによると、2010年10月20日には部数が紙版142万部、電子版8万部に達した。この大ヒットが影響したのか、似たようなタイトル、体裁の書籍が次々に登場した。
例えば、「もし、かけだしカウンセラーが経営コンサルタントになったら」(出版文化社)は、もしドラ同様経営に焦点を当てている。タイトルの表現、「青空を背景に女の子」という表紙のコンセプトともしドラに似ている。「金欠の高校生がバフェットから『お金持ちになる方法』を学んだら」(PHP研究所)は、ドラッカーならぬ「投資の神様」ウォーレン・バフェットを書名に入れた。主人公が謎の美少女とともに、過去の世界的な経済事件を追体験する物語だという。
さらに、「もしリアルパンクロッカーが仏門に入ったら」(イカロス出版)になると、もしドラ似でありながら、パンクと仏門という奇抜な取り合わせも目を引く。ほかにも「もしONE PIECEファンの女子大生が起業したら」(イーグルパブリシング)、「もし無機物が人間になって恋をしたら」(リブレ出版)といった具合に、続々と現れている。
書店で手にとってもらうための「作戦」
「金欠の高校生が~」の出版元、PHP研究所に取材すると、もしドラの影響は「多大に受けている」と認める。「ひと目でわかるような本でないと、書店で埋もれてしまう」と編集担当者。そこで、ヒット作となったもしドラのエッセンスを「拝借」したようだ。「かけだしカウンセラーが~」を出す出版文化社も、タイトルなどはもしドラにあやかっており、「何とか手にとってもらおう」という作戦だと話す。ただ、一方で、「もしドラと比べて、ビジネス小説としての色合いが濃い」と、中身の違いを強調する。
「パンクロッカーが~」を出版したイカロス出版に聞くと、若い世代に親しみを持ってもらえる仏教の入門書を出すにあたって、販売好調なもしドラの「パロディー」を思いついたという。マネジメント本と宗教本という全く違うジャンルで、「書店でも競合しないと思い、迷惑にならない範囲で」(編集担当者)タイトルと表紙イラストを考えたと打ち明ける。
出版業界だけにとどまらず、もしドラをもじったアダルトビデオまで登場したようだ。パッケージは実写で、女子高生のイラストの代わりにセーラー服を着た女性が笑顔で映っている。ここまでくると悪ノリの印象も拭えないが、そこまでインパクトがあった本、ということかもしれない。