無線LANの通信内容を誤収集するなどの問題が指摘されている米グーグル社の地図サービス「ストリートビュー」に関連して、同社のエリック・シュミットCEOがCNNの番組内で発言した内容が波紋を広げている。ストリートビューの安全性に懸念を示す司会者に、シュミットCEOが「引っ越せばいい」と発言したのだ。
ストリートビューをめぐっては、電子メールやパスワードも誤って収集していたことが明らかになったばかり。それだけに批判も強く、シュミットCEOは「失言だった」と釈明に追われることになった。
過去の発言が画面に大きく映し出される
シュミット氏が出演したのは、2010年10月22日(米国時間)放送のトーク番組「パーカー・スピッツァー」。この日のテーマはグーグルのプライバシー問題。シュミット氏の出演部分の冒頭には、
「我々は、あなたがどこにいるか知っている。どこにいたかも知っている。多かれ少なかれ、あなたが考えていることも分かる」
と、シュミット氏の過去の発言が画面に大きく映し出され、司会のひとりであるジャーナリストのキャスリーン・パーカー氏が、「あなたが、私について何を知っているか知りたい。先週、私にどんな薬が出たか知っていますか?私はGメールのアカウントを持っていますが、私のメールを読めるんですか?」と切り込んだ。
これに対して、シュミット氏は
「メールは読みませんし、処方せんの中身も分かりません。分かるのは、およそ1年半の間に何を検索したか。このデータは、(1年半が過ぎたら)廃棄されます」
と反論。パーカー氏は、関連して
「ストリートビューがありますよね?私がどこに住んでいるか分かる。望めば、家に来ることもできる」
と、ストリートビューの危険性についてただした。
「明らかに失言だった」
ここで、シュミット氏の問題発言は飛び出した。
「私たちは、その一線は越えないようにしている。例えば、ストリートビューは、(撮影車を)1回しか運転しません。だから、引っ越せばいいんですよ」
パーカー氏は、「引っ越す?」と面食らった様子だったが、シュミット氏は「そうですよ」と真面目な様子で、パーカー氏は「そりゃ面倒ですね」と苦笑いしていた。
シュミット氏は、この直後に
「私たちは状況を監視している訳ではない。衛星写真も(撮影からグーグルのサービスに反映されるまでに)遅延がある。人々の居場所がリアルタイムで伝わらないように、非常に注意をはらっている」
と釈明したが、やはり視聴者には「傲慢だ」との印象を与えたようだ。
CNNのサイトに掲載されている動画には、
「シュミットは嘘つきだ」
「グーグルは恐ろしい」
「大切なのは、個人情報を守ることだ」
といった批判的なコメントが相次いでいる。
これを受けて、シュミット氏は番組終了後、複数の欧米メディアに対して、
「プライバシーについて堂々巡りの議論の中で出た発言で、明らかに失言だった」
「ストリートビューについて懸念があり、(ストリートビューから)自分の家を削除して欲しい場合は、グーグルにコンタクトすれば削除する」
との謝罪コメントを寄せている。
ストリートビューをめぐっては、日本国内でもプライバシーの観点から批判が強く、政府に対して規制を求める決議を行う地方議会も相次いだ。これを受けて、グーグル日本法人は09年2月、新たにサービスを始める際には地元自治体に事前に通知する方針を打ち出している。また、日本弁護士連合会は、ストリートビューがプライバシーに与える影響を評価する第3者機関の設置を求めている。