韓国の人気アイドルグループ「少女時代」のメンバーが日本のテレビ番組で「好きな日本食は焼き肉」と発言したことが韓国で注目を集めている。ネット上では、「韓国のプルコギから生まれた焼き肉を日本食というは売国行為」と非難する書き込みもある一方、「プルコギと焼き肉は別物だから問題なし」というものもあり、波紋を呼んでいる。
少女時代は韓国の9人組アイドルグループ。本国では絶大な人気を誇り、2010年8月には日本でもデビュー。10月20日に発売されたセカンドシングル「Gee」もオリコン週間ランキングで2位に入った。
「焼き肉は在日同胞が作ったもの」
同曲の発売に合わせ10月24日、メンバーたちがNHKの音楽番組「MUSIC JAPAN」に出演した。その中で司会者から「日本の食べ物で好きなものはありますか?」という質問が出た。
これに対し、「すき焼き」「寿司」「たこ焼き」など次々と日本の食べ物が挙がったが、メンバーの1人で、韓国でも特に人気のあるジェシカさん(21)が「焼き肉」と回答。これが、韓国のネットユーザーの目にとまることとなった。
日本における焼き肉は戦後間もないころ、大阪の在日韓国・朝鮮人が始めたものとされている。焼き肉の語源も、甘い醤油タレを肉に付けて焼いたり煮たりする韓国料理「プルコギ」の日本語訳と言われている。そのため、ジェシカさんには「焼き肉は日本強制占領期間に日本に渡った在日同胞が韓国のプルコギから派生させて作った料理だろ」「日本人が韓国に来て『好きな韓国料理はうどん』と発言するようなもの」「焼き肉はプルコギなのだから、日本式プルコギと呼ばなければならない。これは売国行為だ」といった非難が殺到した。
韓国の芸能人、過去にもキムチ表記で騒動
この騒動には韓国マスコミも注目。10月25日に中央日報が報じ、他の韓国ニュースサイトも、「少女時代ジェシカ、『プルコギは日本料理』で受難」などと報じている。
もっとも、韓国のネットユーザー全てがジェシカさん批判的なわけではない。プルコギは肉を焼く前にタレで味付けしてあるが、日本の焼肉は何も付けてない状態で焼いて、その後にタレを付けるという食べ方もある。そのため、
「日本で7年間生活しました。 我が国のプルコギは固有名詞です。 日本の焼肉とは全く違う食べ物です」
「プルコギと焼き肉は別物だ。こんなことにいちいち怒るのは恥ずかしいこと。それよりも独島と仁川空港を守れよ」
といったものも寄せられている。また、ジェシカさんがアメリカ育ちであるため、その辺りの文化的背景が分からなかったのでは、と見る向きもある。
今回と似たような例では、09年にも俳優のチョン・ウソンさんが日本のバラエティ番組に出演した際、キムチを「kimuchi」(英語では「kimchi」が正確)と表記して韓国内で問題に。番組側が用意した日本式表記をそのまま書いたため起きたミスだったと後に釈明し、混乱を招いたと謝罪している。また、韓国人コメディアンのチョ・ヘリョンさんも、日本の番組に出演した際、「君が代」に笑顔で拍手をしたとして韓国で非難殺到。後に謝罪した。現在、日本に積極的に進出している韓国の芸能人たちだが、日韓の間で気を揉むことも多そうだ。