宇多田ヒカルさん(27)が、全米発表曲を集めたベスト盤の発売に対し、ツイッターで「買う必要がない」とまで怒っている。関係者によると、アメリカのレーベルの事情だというが、一体何があったのか。
まったく同じ日に、同じミュージシャンのベスト盤が2種類も出るのは、かなり珍しいことかもしれない。
「アメリカのレーベルとの話し合いの問題」
それは、国内発表曲に新曲5曲を加えた「Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2」と、全米発表曲を集めた「Utada The Best」だ。いずれも、宇多田ヒカルさんが年内いっぱいで活動を休止する前の2010年11月24日に発売される。
しかし、ヒカルさんは、後者については、ツイッターで10月24日、突然不満をぶつけた。このベスト盤は、自らの意志にまったく反するもので、ファンらに予約をストップするよう呼びかけたのだ。未発表曲は何も入っていないといい、「ファンにお金を出させたくない、全く心のこもっていないモノ」とまで言い切った。
ベスト盤を出すユニバーサルミュージックに対しては、国内盤と同日に発売をぶつけてきたとして、「あまりいい印象を持てません」と批判した。これに対し、EMIミュージック・ジャパンから発売される国内盤は、「誠意ある作品」とした。海外盤と混同されないか心配だといい、「お墨付き&力作」の国内盤は、宇宙の絵が目印だと注意を促している。海外盤の予約が始まったので、我慢できなくなってツイッターでつぶやいたのだという。
ヒカルさんは25日、自らのブログでも気持ちを述べ、ユニバーサル側には、発売日をずらしたり、内容をもっと良くしたりするよう働きかけたものの、どうにもならなかったとつづっている。
一体、ユニバーサル側とは、どんなトラブルがあったのか。
同社に取材すると、担当者は、ツイッター上などの発言は知らないとし、ヒカルさん側と、同社傘下にあって制作を担当したアメリカのレーベル「アイランド・デフ・ジャム・ミュージック・グループ」との話し合いの問題だとした。
原盤権がレーベル側にある取り決めの可能性
ユニバーサルの担当者によると、海外盤の発売は、レーベルからの要請を受けて、日本では、同社から販売することにしたのだという。宇多田ヒカルさん側と行き違いがあったのかについては、「アーティストとレーベルの交渉の話ですので、どういうことがあったのかは分かりません」とだけ答えた。
ただ、日本での販売については、「契約上は、何の問題もありません」と主張している。
ミュージシャンとレコード会社との対立は、過去にもいくつか例がある。
ドリームズ・カム・トゥルーのベスト盤が1997年に発売されたとき、メンバーが本意ではないと怒って、ファンらに購入を控えるよう呼びかけたことがある。また、スピッツも99年、「ベスト盤を出すのは解散するとき」とその発売に抵抗し続けた。
日本レコード協会の広報部によると、原盤権がレーベルなどにあれば、ミュージシャンのコントロールがきかず、レーベルの有利にことが運ぶことがあるという。ドリカムのベスト盤発売では、レコード会社を移籍したものの、原盤権が前のレコード会社にあったという事情があった。
ヒカルさんのケースについては、原盤権がレーベル側にある取り決めになっていたのではないかとみている。もっとも、ミュージシャンによって契約内容は様々で、原盤権をレーベルと分け合うことなどもあるという。
ヒカルさんの国内盤を出すEMIミュージック・ジャパンでは、「ご本人や所属事務所とユニバーサル側との問題だと思いますので、コメントできる立場ではありません」と話している。
ちなみに、アマゾンでは、国内盤は2010年10月25日夕時点で、音楽のベストセラー7位に入っているものの、海外盤は101位になっている。