大手の百貨店とコンビニエンスストアの2010年8月中間決算が出そろった。記録的な猛暑の影響で、コンビニは飲料やアイスクリームが好調で各社増益だったが、百貨店は秋物衣料が伸びないなど逆に猛暑のマイナス効果が出てしまった。足元の消費低迷や百貨店という業態自体の構造問題もあり、百貨店が長いトンネルを抜け出すのは容易ではないようだ。
「春先には景気の先行きを楽観していたが今は不安に変わった。今後さらに厳しさを増す。年末以降、経済が失速することを考慮に入れる必要がある」。決算会見でこう率直に話したのは、大丸、松坂屋を傘下に持つJフロントリテイリングの奥田務会長。
コンビニは猛暑がプラス効果
確かにコンビニに比べて百貨店を取り巻く環境は厳しい。そもそも売上高でコンビニの方が上を行く。2010年上半期(3~8月)にコンビに1位のセブン-イレブン・ジャパンが1兆4675億円だったほか、ローソン(7475億円)、ファミリーマート(7278億円)と続き、4位のサークルKサンクスでも4296億円。
これに対して百貨店では、1位の三越伊勢丹ホールディングス(HD)が9月中間決算の業績予想を5800億円としているほか、Jフロントが4666億円、高島屋が4227億円、そごう西武連合が4110億円にとどまる。コンビニは4社中2社が増収(減収のローソンは沖縄事業移管に伴う特殊要因)だったが、百貨店は4グループとも減収だ。
猛暑効果についてファミリーマートの上田準二社長は「売り上げの4~5%分あった」と指摘。飲料やアイスクリームなどは利益率も高いため、増益にも貢献したようだ。
百貨店は4グループのうち2グループが増益になったが、売り上げ増を伴うものではなく、人員減などによるコスト削減効果の結果。猛暑の恩恵は薄いどころか「(売り上げ、利幅の大きい)秋物衣料品の立ち上がりが8月に遅れた」(高島屋の鈴木弘治社長)と、マイナスの影響が出た。
高額商品も株安の影響などでブレーキ
実際、全国百貨店売上高(既存店ベース)は、9月まで31カ月(2年7カ月)連続で前年割れ。特に9月は厳しい残暑で秋冬物の衣料品の売れ行きが鈍く、前年同期比5.2%減と8月の3.2%減より減少幅が拡大してしまった。春先には一時好調と伝えられた高級腕時計などの高額商品も、足元は「株安の影響などでブレーキがかかっている」(大手百貨店)。特に衣料品が不調とされている、そごう・西武連合は厳しさを増しており、8月中間決算の営業利益は前年同期比91.1%減の2億円と営業赤字の瀬戸際まで沈んでしまっている。
こうした中、百貨店各社は構造改革を急ぐ。松坂屋は主力の銀座店に、中国資本の傘下に入った家電量販店「ラオックス」を11月20日に出店し中国人客取り込みを狙うなど、なりふり構わぬとも見える対応策に乗り出す。
高島屋も新宿店にユニクロを入れたのに続き、今度は2011年2月、立川店に家具チェーン「大塚家具」を誘致。しかし、いずれもかつて各社が欧州高級ブランドを競って出店させたのと同様、根本的な解決策になりえないと見る向きが多い。百貨店自身が人々に夢を与えた時代を取り戻せるか、「解」はなかなか見えない。