米国を中心に、世界各地でミツバチの大量死、大量失踪が近年報告されている。ハチが巣から消えうせ、巣自体が機能しなくなる「蜂群崩壊症候群」(CCD)は原因も分からず、まるでミステリーだ。
ところがここにきて、米軍と大学が共同研究を実施し、「大量死」の原因の解明につながったという。今後の被害を食い止めることができるだろうか。
ウイルスとカビが次々に襲いかかる
米国でCCDが頻発していることが伝えられたのは2006年から。以後、2010年までに20~40%のミツバチの群れが被害を受けた。
ミツバチの群れは、働き蜂なくして成り立たない。女王蜂や幼虫の世話から巣づくり、外敵から巣を守る役目、さらに蜜や花粉も集める。玉川大学ミツバチ科学研究センターのウェブサイトによれば、1匹の女王バチ、100~2500匹の雄バチに対して働き蜂は3~6万匹と圧倒的な数だ。
ところが、この働きバチが大量に消えうせてしまう。死がいも見当たらない。巣に残されるのは、巣の中の「仕事」を一切やらない女王バチや幼虫たち。やがてこれらは息絶えて、群れは全滅してしまう。
CCDはこれまで、農薬や遺伝子組み換え作物などが原因として疑われてきた。だが最近になって、米国で有力な研究発表が出た。2010年10月6日付の米ニューヨークタイムズ紙(電子版)によると、米軍の科学者とモンタナ大学のジェリー・ブロメンシェンク教授の研究グループによる「共同チーム」が、オンライン科学ジャーナルで明らかにしたもの。健全なハチの群れと、CCDが発生し死滅した群れを数千にわたって調べたところ、CCDに襲われたすべての群れで、ある種のウイルスとカビの両方が見つかったという。いずれも低温で湿度の高い場合に急増し、ハチが栄養をとる邪魔をする。どちらか一つだけではハチを死滅させるには至らない。二つが何らかの形で次々とハチに襲いかかり、巣を崩壊に追い込んでいるという説だ。