電子書籍の規格が乱立する中、KDDIが発表した新端末に対して、著名なツイッター利用者から続々と批判の声があがっている。通常の書籍やPCで使用するワープロであれば、「。」「、」などの句読点が行の最初に来ないような処理が行われるのだが、マスコミ各社に配られた広報用の写真素材の画面では、ばっちり行頭に「。」が確認できるのだ。このことから、「格好悪い」といったブーイングが続出している。
ソニー、凸版印刷、朝日新聞社と共同開発
話題になっているのは、KDDIが2010年10月18日に発表した電子書籍端末「biblio Leaf SP02」。3Gや無線LAN経由で電子書籍データをダウンロードでき、1台で約2000冊分のデータを保存できる。KDDIでは、ソニー、凸版印刷、朝日新聞社と共同で電子書籍配信のためのプラットフォームの整備を進めており、「biblio Leaf」も、新プラットフォームに対応するものとみられる。発売は、10年12月下旬以降を予定している。
画面は6インチと比較的大きめだが、そこに映し出されたサンプルの文字列をめぐり、波紋が広がっている。同社が広報資料として配付した画像データには、夏目漱石の「こころ」の冒頭部分が縦書きで表示されていたのだが、そのレイアウトを再現すると、以下のような状態だったのだ。
(1行目)「 私はその人を常に先生と呼んでいた。だからこ」
(2行目)「こでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない」
(3行目)「。これは世間を憚かる遠慮というよりも、その方」
(4行目)「が私にとって自然だからである。私はその人の記」
つまり、「。」「、」「)」といった文字が行の最初に来ないようにする「禁則処理」と呼ばれる処理がされていないことに、ツイッター上で批判の声があがっている。
「コンテンツファイルの設定によるが対応している」
かなり早い段階で、編集者の仲俣暁生さんが
「行頭に句点がくる画面を平気で広報用に載せている時点で気持ちが萎える。表示フォントはこれしかないのかな。こんな書体じゃ誰も読まないよ」
と批判。これに対して、批評家の東浩紀さんは
「こりゃあ、格好悪いですねえ」
ITジャーナリストの佐々木俊尚さんも
「ほんとだ。酷い」
と同意した。他のツイッターの利用者も
「アウト」
「これはひどい」
などと非難を続け。知的財産権に詳しい小倉秀夫弁護士も
「日本語禁則処理はしない!という意思の表れかも」
と、皮肉った。また、ゴシック体に見えるフォントも、縦書きで小説を表示するには不適切だとして評判が悪い。
KDDI広報部によると、
「(電子書籍の)コンテンツファイルの設定にもよりますが、禁則処理には対応しています。フォントも、『新ゴR』というゴシック体と、『リュウミン』という明朝体に対応しています」
とのことで、「禁則処理ができない」というツイッター上の懸念は杞憂だと言えそうだ。ただし、広報資料に禁則処理をしない設定の電子書籍ファイルの写真を載せてしまったことについては、脇の甘さを指摘されそうだ。